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= 2016年度 =
▼第42回日本保健医療社会学会大会参加報告
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第28回日本エイズ学会学術集会参加報告2014年度

特定非営利活動法人りょうちゃんず
理事長 藤原良次

さる、12月3日〜5日まで大阪市大阪国際会議場で開催された、第28回日本エイズ学会学術集会に参加いたしましたのでご報告申し上げます。
まず、自分の発表から報告いたします。今回は2題の口頭演題を発表いたしました。初日の薬害セッションにて。演題「心理専門カウンセラーおよびピアカウンセラーの介入に関する研究」として発表いたしました。この研究は、独立行政法人大阪医療センター白阪琢磨先生を研究主任者とした「HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究」の分担研究として実施したものです。
内容は。平成24年から3年間16人のHIV感染血友病患者の皆様にインタビュー調査したものです。この調査での16例のうち、実際に現在専門心理カウンセラーのカウンセリングを受けているのはわずかに2例であり、受けた経験1例を加えても3例にとどまっている。ピア・カウンセリングについては、ピア・グループ(特定非営利活動法人りょうちゃんず、特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権、(社)はばたき福祉事業団)の役員や相談員が6例、これらのイベントには参加する2例、地元支援団体と関わりを持っているが2例、今は相談することはないがかまったら相談するが3例あった。家族以外の支援グループとして、ピア・グループや地元支援団体がその機能を果たしていることが示唆された。一方ででは心理専門カウンセラーのカウンセリングは思ったほど利用されていない。これには、そもそも、心理専門カウンセラーがいない。カウンセラーの働きかけ、患者の認知不足、患者側のニーズの低さ等が考えられるが、もう少し精査する必要がある。研究協力者との事例報告を経て報告書にて発表するつもりである。
検査・相談体制のセッションでも演題「NGOと行政が連携した検査イベントにおける現状と課題に関する一考察」として発表いたしました。
内容は広島において、特定非営利活動法人りょうちゃんず、広島市、広島県、(社)広島県検査技師会、の4団体主催の検査イベントにおいて、りょうちゃんずピアカウンセラー研修にて保健師さんが検査前カウンセリングが出来ることとなったこと。日頃出会うことの少ないMSMの方に会え、その方の考えや思いがきけたこと、講演会を開くことで、学生たちにHIV問題を身近に感じてもらえたこと、ゲイバー向けアウトリーチが重要なこと、各団体の視点がはいることで、より柔軟な検査ができ、幅広い受検者のニーズにこたえられる検査になったこと、それぞれが得意分野で参加できること、ブロック拠点病院の医師、看護師、カウンセラーの協力があり、採血、リスクマネージメント、検査カウンセリングがスムーズに行くこと、会場を提供してくれる産婦人科クリニック、病院の存在が大きいこと等を発表した。一方で人員確保、予算確保が年々困難になっていることもあわせて発表した。座長の岩室先生からは予約システムの質問があり、それについても実際の利用法等を回答した。

薬害セッションでは、はばたき福祉事業団の訪問看護ステーションに、現状をみてもらう取り組みについて興味があった。訪問看護ステーションは製剤を注射してもらうなどすでに利用している人もいるが、看護と、相談を住み分けて利用するのは新しい取り組みであり今後を見守りたい。
立浪先生からは、以前は、ロングタイムノンプログレッサーと呼ばれた人でも状態は悪くなっているとの報告があった。
遺族健康診断の取り組みについても報告があったがデータや何を報告するのかが十分になられてない印象を受けた。
初日のランチョンセミナー「あの人最近来てないね」に参加した。大阪医療センターでは、様々で取り組みをしているようだが、他の疾患からしてみても、HIV診療は、丁寧すぎる気がする。病院職員の疲弊が気になる。そもそも、薬のない時代を生き延びた報告者には考えられない。
シンポジウム「個別施策層へのエイズ対策」に参加した。
市川誠一氏(名古屋市立大学)は個別施策層を決めたがために問題自体をどこが取り扱うかが難しい層がある。彼の研究であるMSMについても、若いMSMはMSMのところか、若者のところかによって違う。たしかに、今ある層を取っ払って人を集めて解決する方法が必要であろう。
又、岩木エリーザ氏は、外国人問題について行政が準備した時にはその外国人がいなくなるとの問題提起があり、もっともなことだと思った。
2日目はスカラシップ委員会企画「薬害事件の教訓からいま振り返るHIVの医療と福祉」に参加した大阪原告団理事、大阪医療センター白阪先生、MSW岡本先生が発表した。
大阪原告団の交渉の結果として、HIV感染患者さん、それに一緒に立ち向かってくれる医療者(心理・福祉の専門家)の役に立っているのなら、汗を流した甲斐もある。

3日目は政策・医療体制のセッションに参加した。歯科診療体制はわずかに10都道府県しかネットワーク構築がされていないことがわかった。岡山県の取り組みでは病院での検査体制の充実により受検者数が増えたとの報告があった。歯科診療体制構築、透析、長期療養施設の連携については、医師会、歯科医師会の協力がひつようであり、行政の頑張りも必要である。又、事故の際のHIV治療薬の服薬も不可避である。HIV専門用語ではなく、簡単な言語で講演することも必要であろうと思いその旨は発言した。

ランチョンセミナーは「HIVに合併したウイルス肝炎の治療〜進歩と課題〜」に参加した。
新たに出ている新薬の情報であるが、治療薬の聴かないサブタイプには、厳しそうだ。しかしながら、学会後の情報では、それにつても朗報がある。それはべつに機会があれば報告させていただくこととする。
参加しなかったセミナーではあるが、「抗HIV薬の移り変わりから未来を考えるー患者と医療者、それぞれの経験と慣性語り継ぐことー」の医師の部分は洛西ニュータウン病院上田良弘先生に話して頂きたかった。実際は断られたから仕方ないのであるが、先生の薬害患者への思いは、ロマンティックである。むかし、広島で一緒に飲んだ時、先生がいつものように「お前らは・・・」とやり始めた。その時、「僕は、お前の方ですか?らの方ですか?」尋ねたとところ、少し笑い「お前はお前よ」と答えた一瞬を決して忘れないであろう。
HIVは慢性疾患になりつつあると言われ、それが定着しているが、薬物使用者や、病院に行かなくなる等の新しい問題もある。HANDの問題もまだ表面化されてはいない。もうひとつ、HIV・HCV重複感染血友病患者の問題はそれらとは全然違い命の問題、生きなおしという人生の問題を抱えている。関わる人すべてがまじめに取り組み、体制の整備してきているが、それでも残念ながら命を落とす仲間もいる。HIV・HCV重複感染血友病患者の救済は別枠で取り組んでいく必要性を強く感じている。又、学会への働きかけも今後はこれまで以上に必要になるのではないかと思える。
☆☆☆☆☆

特定非営利活動法人りょうちゃんず
早坂典生

去る、平成26年12月3日〜5日に大阪国際会議場で行われた第28回日本エイズ学会学術集会(大会テーマ「Cureは可能か?」)に参加したので報告します。

1. 研究発表について
初日の薬害セッションでは藤原理事長から「心理専門カウンセラーおよびピアカウンセラーの介入に関する研究」について口頭発表を行った。私も研究に参加し、全国の血友病HIV感染患者の皆さんにお会いした。感染から20年以上経過した現在、様々な環境の中で暮らしながら、今まで話したことのない率直な思いや、家族や周囲の支援、治療や医療機関との関係に折り合いをつけながら暮らしている様子を話してくれたことにはとても感謝している。実際に心理専門カウンセリングの受けた方は3名であったが、今後の在り方としてカウンセリングやピアカウンセリングがどのように役立てられるか、さらに検討したいと思う。尚、この研究発表の詳細は「HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究」(研究代表者:(独)国立病院機構大阪医療センター白阪琢磨)の平成26年度研究報告書において報告する。
検査・相談体制のセッションでも続けて藤原から「NGOと行政が連携した検査イベントにおける現状と課題に関する一考察」を題し、広島市、広島県、(社)広島県臨床検査技師会と4者共催で続けているイベントから、りょうちゃんずを始めとした4者の役割と今後の課題等に関する口頭発表を行った。
私は、りょうちゃんずの役割の中で受検者への声かけについて述べたいと思う。受検者の待ち時間に声をかけてみると「HIVについて心配していません」「聞きたいことは何もないです」「大丈夫だと思います」という反応がある一方で、「検査を受けたいと思っていたんですが、初めてなんです」「エイズになると死ぬんですか」「HIVとエイズって違うんですか」「薬を飲めば大丈夫なんですか」等といった質問を聞いた。そんなときには自分の知識や実体験からアドバイスをすると「わかりました。安心しました」となり、帰りには笑顔で「受けてよかった」「また、受けに来ます」と言った声を聞くと本当に検査を受けてもらってよかったと感じた。
それぞれの団体が得意分野を持ちより多角的な視点でイベントを継続することにより、誰もが受けやすいHIV検査になっていると思う。このような話題は、日本エイズ学会だけでなく、日頃の活動の中でも地道に発信していきたい。もし可能であれば、他地域の行政機関や諸団体と一緒に実施できることも願っている。

2.シンポジウム等の参加から
初日は、「個別施策層へのエイズ対策〜層を超えた取り組み〜」に参加した。市川誠一先生(名古屋市立大学)の報告では、エイズ予防指針では青少年、外国人、MSM,セックスワーカー、薬物乱用者が個別施策層という括りで振り分けされていたものが、最近では20代でMSM、国内で感染した外国人、薬物使用による性感染、性産業の利用者・従事者等の課題が重複している点が報告された。また、大河りりい氏(SWASH、TGWAP)からもトランスジェンダー女性やセックスワーカー女性などは研究班もなく、将来的な対策に不安があると語られた。一つ一つの解決も難しい中で、層を超えた検討する場の困難さを感じたシンポジウムであった。
二日目は、「薬害エイズ事件の教訓からいま振り返るHIVの医療と福祉」に参加した。スカラシップ委員会の主催で行われ、大阪HIV訴訟原告団の理事の方と白阪琢磨先生(大阪医療センター)、岡本学先生(同)から発表があった。
スカラシップ委員会から50人以上のHIV陽性者が支援を受け参加しているとのことであった。私も最初にエイズ学会に参加したときは、様々な治療や情報を求めて参加したが、右も左もわからずに広い会場を彷徨っていたことを思い出した。とくに今回初めて参加した方には、一つでもいい情報をみつけて帰って欲しいと思った。
薬害の歴史については、自分もその一人として、感染前後の混乱や和解の現場を見ながら、そして医療の進歩をこの目で見ながら生きてきた。福祉制度の背景には、HIVが社会防衛の対象であったものが福祉の対象となり、障害者手帳の取得や障害認定につながった。先輩たちが勝ち取ったくれた権利が、すべてのHIV陽性者に役立っていることは誇らしく思う。また、今ある制度をこれからも大切に使ってもらいたいと思った。
さらに岡本先生から長期療養施設や介護施設の受け入れについて、医療保険や介護保険等の制度上の支援が困難な事例などが紹介され、HIVに感染しても将来を考えられる時代になった今、新たな問題と感じる。大阪でも難しいことであれば、地方においてはさらに難しい問題と感じた。しかし、ポスター発表の中には自立困難なHIV陽性者へのサポート事例や、在宅療養、訪問看護、様々な施設の受け入れ事例の発表も増えており、研修や勉強会を開催して受け入れようとしてくれる人たちが少なからずいることはとてもうれしく思った。「経験がないからといって、できない理由にはならない」とはっきり書いてあったポスターを見て、まさにその通りと思ってしまった。
ランチョンセミナーは「ARTの将来展望」に参加した。
スタリビルドの有効性と安全性について、潟永博之先生(国立国際医療研究センター・ACC)から報告があった。認可から1年以上経過して、有効性も安全性も認められてきており、患者の利便性も含めて変更する人が増えているとのこと。
私も、1日1回1錠の薬ならいいなあ思ってしまう。できればそうしたいところであるが、現在はとある理由により休薬中である。自分の再スタートの時は選択肢の一つであるが、相互作用や副作用、そもそも自分の身体に合うかどうかは飲んでみなければわからないのが抗HIV薬である。選択には十分に主治医と相談し、タイミングを間違うことなく判断したい。1日1錠だからといった安易な服薬変更だけはやめて欲しいと思う。
「HIVカウンセリングにおいて変化すること・変化しないことーカウンセラーの経験から読み解くー」に参加した。
臨床心理士の宮島謙介氏(東京都エイズ相談員・しかかばクリニック)長峰由紀氏(長崎大学病院)、松浦亜由子氏(名古屋医療センター)、伊藤俊広先生(仙台医療センター)、池田和子氏(国立国際医療研究センター・ACC)から発表があった。 変化したことは中核拠点病院の整備により常設日が設定されたこと、ブロック拠点の施設設備が進み、相談室の確保など仕事がやりやすくなったことが報告され、カウンセラー側の役割は、患者に寄り添って心を支え、患者のニーズを見立てて支援していくことに、変化はないとのことであった。
医療者の立場で伊藤先生は、過去の経緯からエイズカウンセリングが進歩したが、治療効果が見られるようになった現在では、エイズカウンセリングだけが特化されるものではなく、他の病気でも必要とする人が受けるものであるため、将来的にはエイズカウンセリング自体が無くなっていくのではないかと語った。そして、医療以外の部分をカバーしている存在は認めつつも、患者さんの治療に結びつくカウンセリングであって欲しいと語っていた。
池田氏は、もっとチーム医療の一員として積極的に入ってきて欲しいと語った。
カウンセラー側からは、チーム医療にどの程度入っていいのか、入っていけるのかの判断がしにくいという意見や、受けたいと思う人に対する支援であること、性行動や生活など医療では対応できない部分を支えることが目的にしていることなど、医療者の考えるニーズに差があるように感じた。
医療者もカウンセラー側も、患者を支えようという気持ちは変わらないと思うし、利用できる制度は積極的に使えばいいと思うが、この微妙な差が、実は大きな課題かもしれない。
現在調査中の心理専門カウンセラーおよびピアカウンセラーの介入に関する研究でもそうであるが、私はカウンセラー側がもう少しアピールしてもいいかなと思う。安心できる場所の中で、自分の話を聞いてもらうことで、自分の立ち位置を確認したり、自分の思いを整理したりすることも時には必要と思う。ただ、カウンセラーを使いたくても使えない施設もたくさんあることを伝えておきたい。
「第4回世界エイズデイ・メモリアル・サービス〜命(いのち)をつなぐ〜」にも参加した。
シンポジウムと違い、それぞれが思いを胸に参加するものである。エイズで命を落とした人たちはたくさんいる。治療薬がなく死の病と言われた時代を過ごし、ある人は亡くなった方との思い出を語り、ある人は当時の自分を振り返りながらメッセージを語った。参加者が持っている一人一人の思いは共有できないが、自分の思いを胸に秘めて、これからも生きていければいいと思った。

三日目は、ランチョンセミナー「HIVに合併したウイルス肝炎の治療〜進歩と課題〜」に参加した。
新たなC型肝炎の治療について四柳宏先生(東京大学)から報告があった。抗HCV薬の服薬によりHCVの消失が可能となり、治療効果が高いことが報告された。私の気持ちとしては、すぐに手を伸ばしたい気持ちになったが、HCVの遺伝子型や慢性肝炎の進行状況、HIV感染の有無などにより、簡単に使用できるものではないものであった。しかし、それでも私でも選択できるのか、何かできる方法がないのか、現在自分にできる選択肢を突き詰める必要性があると感じた。これまでの抗HIV薬もそうであるが、薬にはメリットとリスクがあり、どこで折り合うを付けるかが、一番難しい問題であるが、いい薬と出会えることに希望を持ちたいと思う。
最後に、本当の意味でCureは可能か?については、今はノーとしか言えない。後悔しても仕方ないが、今の治療が十年前なら、もっと違う生き方や今の生活が変わっていたかもしれないと思う時もある。でもここまで多くの先輩たちや仲間の犠牲、医療や基礎の研究成果の積み重ねで今であると思う。今できることは可能性がある限り、今だからこそできる治療を受け、これからも元気に幸せに生きていきたい。