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活動報告


= 2007年度 =
▼第21回日本エイズ学会参加報告
▼FOLLOW 3周年 Friendship Meetingに参加して
▼第8回アジア・太平洋地域エイズ国際会議参加報告
▼2014年度 ▼2011年度                              
▼2010年度 ▼2009年度 ▼2008年度 ▽2007年度 ▼2006年度 ▼2005年度 ▼2004年度


第21回日本エイズ学会参加報告

YJ
2年ぶりに日本エイズ学会に参加して

今年で21回目を迎えた日本エイズ学会は、広島の平和記念公園に隣接した国際会議場で行われた。私は、去年の東京での会議には体調が良くなかったため参加できなかったのであるが、今年が2年ぶりの参加になるのである。やはり気分的にか、それとも少し体調的にしんどいのか、一日目は夜からの会議に参加することになった。広島に着いたときには、もう既に夜だったので、会場が敷地の広い場所にあり、辺りの様子もよく分からず、急いで会場に行き、その日最終のシンポジウムを聞くという具合であった。それで、何とかシンポジウムが始まる前に会場に着き、私にとっては、学会での最初の演題として話を聞いたのである。
それは「HIV陽性者の治療認識」というテーマで、長谷川さん(ジャンププラス)と大平さん(はばたき福祉事業団)が座長を務めたシンポジウムであった。各シンポジストとしては、藤原さん(りょうちゃんず)と矢島さん(ぷれいす東京)が自分たちの支援活動を中心に話され、言うなれば、東京とそれ以外の地域という立場で話された感じである。現在でも東京には感染者の大多数が集中し、ACC(エイズ治療開発研究センター)を中心として感染者が治療をしているのであるが、病院以外では、医療現場と違った自助活動を行うグループの中で自立的管理を達成するワークショップが行われているのである。その作業のファシリテーターが矢島さんの現在であるなら、広島の藤原さんからは、まず患者・感染者の情報が少ないという状況を述べ、良くも悪くも医師、看護師からの情報しかないということを語っていたのである。感染者数は日本という単位では増えたとは言え、6・7割の数字は東京に集中しているという実態が、情報の少なさ、患者あるいは医師の孤立など、東京以外の地域の問題となっていると思うのである。また、医師の山本先生(九州医療センター免疫感染症科)は、医療を中心に話され、医師はやはり治療中心になるとの意見が述べられ、看護師(ナースコーディネーター)の池田さん(ACC:エイズ治療・研究開発センター)からは、医療者は信用できないと思っているが、NGOの勉強をもっとして考え方を広げていかなければならないと述べられていた。印象に残ったのは、2000人という感染者数を誇るACCに所属する池田さんでさえ、感染者の長期療養という部分については疲弊しているという内容が聞かれたことである。上記はシンポジウムのほんの一部であるが、医療者側と患者(感染者)支援者側の本質的な違いとお互いの力量をうまく刷り合わせて必要な技術を身に付けていこうとする内容が話されたのではないかと思うのである。
 一日目は夜に行われた最後のシンポジウムしか参加する機会がなかったが、二日目の朝は、気にしていた天気も回復に向かい気分的に良い状態であった。早速ホテルを出て会場に向かった私であるが、道路からその美しい風景に見とれてしまうような、昨日とは違った国際会議場が見えたのである。会場の前には、とても大きな噴水が躍動し、会場の向こう側(北側)には黄色いイチョウと紅葉が並び、まさに見ごろの紅葉シーズンなのである。昨夜見た夜の風景では、まったく想像も出来ない鮮やかさに圧倒された私なのである。そうは言うものの、2年ぶりに来た学会なので、とりあえずは、その光景は置いといて、とにかく演題を見に行くことにした。今まで学会には数人で訪れて、医学、薬学なども含めて担当していたのであるが、今回は割り当て分担もなく、自らの興味で見たいところを見ようという暗黙の了解で今の自分の調子を考慮して発表演題を選んでみたのである。実は、一般演題のほとんどは一日目に終了しているので、残りの中で自分の興味があるものを探したのである。それで、その日は教育講演として組まれた「自立支援医療」が兵庫医大の伊賀さんであったので見に行ったのと、後半には「看護」のプログラムを聞いたのである。
 学会の中での「教育講演」という面白い企画なのだが、伊賀さんの話は説明としては非常にうまいのである。大阪ではHIVで有名な医者も何名かいる中でMSWを相手に(と思う)、新しい制度をどのような方法で本人に説明していくのか、ということをまとめたのである。条文条項にこのように書いてあるのは、簡単に言うとこういうことなのよと、スライドを使っての説明に、為るほどそういうことなのかと私なんぞは関心してしまうのである。まあ簡単に言えば、2006年4月から施行された障害者自立支援法が今までの「更生医療」「育成医療」及び「通院医療費公費負担制度(精神)」を統合して成り立ったものであり、免疫機能障害(つまりはHIV感染者)に対する助成は、抗HIV療法など投薬を行う患者に自己負担1割を原則として済ませる手続きなのであるが、HIVについて言えば、重度継続治療者として自己負担額について上限があるため、あとは所得に応じて月額0円から2万円の間で5段階に分かれている制度なのである。このような制度を本人の了解と各市町村の実態を見つつ進めていくというのが、伊賀さんの意見であったと思うのである。
 二日目はエイズ学会の総会がある日だったので、午後以降は夕方まで演題はなかったのであるが、朝に知ったこの場所のすばらしい状況を残しておきたいと思い、カメラ(単なるコンパクトデジカメですが)で紅葉の風景とその公園の中心にある慰霊碑を撮ったのである。原爆ドームには昔に行ったことがあるが、この公園に紅葉の季節を訪れたのはおそらく初めてかと思うのである。高田先生をはじめ皆様の努力が、このようなすばらしい場所でのエイズ学会を開催させたと考えるのである。学会に話しが戻って、この日の午後からの部で行われた「看護」については、それぞれの病院での難しいケース(事例)についての報告が行われたが、現代の医学では特殊な医療であるHIVについて、その困難と成功例が聞き取れるのである。慢性疾患としてのHIVを考えるとき、長期療養が昨今の課題であるが、アドヒアランスを10年、20年と続けていくことの難しさは本人のみでなく、それをサポートする看護師にも存在するのである。印象に残ったこととしては、大阪市立総合医療センター(1063床)は、現在250名の患者がいるが、外来診療について医師の診療のみでなく、週に2回、午後に看護師による支援外来が一人1時間単位で行われていることである。支援外来に関する紹介がなされ、それに伴う事例内容が発表されたのであった。
 この2年間、私は仕事で人と会う機会を減らしてきた事情があり、エイズ学会に出てくれば、それなりにこの業界で中心となっている人と会うことを承知して広島に着たのである。いろんなわだかまりも含めて、この2年間極力表に出ないようにしてきたのだが、最近はそろそろ外で人と話をする状況を作っていかねばならないという感じを持ってきたのである。それでもやはり出来るだけ会場内ではぶらぶらせずにしようと思ってはいたが、久しぶりに会って立ち話をすることも何度かあり、(嫌ということではなくて)けっこうしんどいものだなと感じたのである。私のそのような事情もあるので、極力夜は毎晩食事や飲み会に出かけて人と話をするようにすることは、自分への試練もあるとして、がんばっていたと思うのである。その延長もあるが、国際会議場以外でも、エイズ関連のイベントが行われ、3日目の夕方には「Living Together」が近くの施設で行われたのである。これは本来ならもっと大きな行事ではあるが、縮小版という形で行われたものである。私自身、最初は何も聞いていなかったので、呼び出されてみんなに着いていったのであるが、お菓子とジュースを飲みながら、人が読む詩を聞くという、単純ながらそれで充分という行事なのである。まさにシンプルでありながら、読むそれぞれの詩の重さというか切なさを感じずにはいられないものであった。もし、またどこかで参加できるチャンスがあれば、行ってみようかなと思った企画であった。
そして、このエイズ学会の最終日である3日目には、白阪先生(大阪医療センター免疫感染症科)、_原先生(大阪医療センター薬剤部)が座長の「チーム医療の確立を目指して」のシンポジウムと午後からの三間屋先生(静岡県立こども病院血液腫瘍科)が座長をする「HIV感染血友病患者の医学的・社会的現状と今後の課題」を聞いた。この2演題についてはテーマ的に、チーム医療がHIV医療の最も主要な医療連携の話しであり、血友病患者へのHIV感染については、血友病患者から始まった日本のHIVの状況からしても、最も話し合われなければならない内容と思うのである。チーム医療については、白阪先生を主任研究者として作られた「外来チーム医療マニュアル」が資料としてあり、理想として書かれた内容について、疑問を呈する佐藤先生(北海道大学病院高度先進医療支援センター 医師)のお話しも聞けた内容であり、チーム医療のあり方については、これから経験していかねばならないものと考えられた。一方、血友病患者のHIV感染については、3年前に始まった三間屋先生の演題から考えると、会場への参加者が減りシンポジウムとしては盛り上がる状況ではなかったと言えるのではないか。それは、選出されるシンポジストにもよるが、立浪先生(聖マリアンナ医科大学医学統計)、花房先生(荻窪病院血液科)の話の内容と山崎先生(東京大学大学院医学系研究科健康社会学教室)及び大平氏がする話しとが折り合いがつかず、内容的には会場の雰囲気とともに粛々と発表するものになってしまったと思うのである。今後もエイズ学会で続けていくのであれば、もっと率直に人々の意見が聞ける内容であってほしいと思うのである。
 以上で日本エイズ学会については無事終了ということであるが、今回私は学会の他に、次の日に抗体検査のイベントに参加したのである。これは広島県の事業ではあるが、検査に使う予算については、NGOの力を使いつつ実行されるものである。私としては、今回が初めての検査事業であったが、イベントを行いつつ検査をすることを進める内容である。私は検査会場にいたので、イベントでどのように人を検査に進めるのかは分からなかったが、六十数名という人たちが検査を受けたのである。幸い陽性(要確認検査)と判断された人はいなかったが、臨床心理士なども参加されており、「陽性」と判断された場合の準備も整えられているのである。この検査の場合、即日に結果が出る検査であるためプラス判定結果が出ても、すぐさまHIV陽性とは言えず、陽性かもしれないという言わば「疑陽性」で「確認検査をして下さい」との結果を本人に渡すというものである。それを考えると、もし「陽性」が出た場合がどのような状況になるのか、分からないという状況なのである。今日受けた検査で「陽性」が出て確認検査を受け、その結果が1〜2週間後という期間を持つことになるのである。もちろん、臨床心理士あるいは医師が話されることから、最大限の準備はしているが、やはり実際に出てみないと分からないというのが正直なところである。
 こんなことを考えながら、広島から帰ってきた私だが、それから1週間後には金沢で「抗体検査」に参加した。少しは状況が分かってきたが、地方ごとにイベントを兼ねて行うところや、まったく検査のみを行うところなど、やり方はまちまちのようである。思うことは、休みに関わらず、地元の保健婦さんや病院の医師及び看護師が参加して、一生懸命仕事をしているのである。ひとつに検査をやるにしても、その予算や検査器具などけっこうしんどい部分も裏方ではたくさんあるのである。そういう裏の事情も見つつ、この検査に立ち合わせていただき、感謝している状況なのである。先のことは分からないが、何かを感じつつ、次のステップへと行きたいと思うのである。

☆☆☆☆☆

代表 藤原良次

去る11月28日(水)から30(金)に、広島市の広島国際会議場にて開催された、第21回日本エイズ学会学術集会に参加してきましたのでご報告いたします。
あらゆるところで「広島に来て!」といってきました。おかげでたくさんの人に声をかけていただきありがとうございました。しかし今回の学会長広島大学病院輸血部副部長高田昇氏は、血友病、薬害エイズ、エイズ治療と我々と同じ時間を別の立場で過ごされた方でしたので、共有できる場所がなかったのは残念でした。
藤原がシンポジストを努めたシンポジウム「HIV陽性者の治療認識(TreatmentLiteracy)〜医療現場と自助活動の連携・協働の可能性を探る」から報告します。
本来病気の治療は病院が主役ですが、慢性疾患になると病気を抱えつつ生活することが必要です。そのため、コミュニティへとの繋がりも重要です。又、友人、家族、会社、学校とHIV陽性者のリソースが多ければ選択肢も多くなります。
具体的内容ですが、独立行政法人国立病院機構九州医療センター山本氏、国立国際医療センター看護師(コーディネーター・ナース:以下CM)池田氏それぞれから、医療現場での医師、看護師(CM)役割りの説明がありました。その内容はそれぞれの職種の最も必要な役割りを理解していており信頼できるプロであると認識できました。
コミュニティ側の医療関与について司会のひとり社団法人はばたき福祉事業団大平理事長より医療体制は薬害HIV訴訟の和解から始まったことの報告が冒頭にあり、私自身も最初から関わった数少ないひとりとして、命をかけて命を守るものを造った思いが強いです。そして今も、その協議は続いています。また、もうひとりの司会陽性者ネットワークJaNP+代表長谷川氏からは最初は「SHIP」からHIV学んだことの発言がありました。ぷれいす東京矢島氏からは初期陽性者へのグループミーティングの効果の報告、私はりょうちゃんずの立ち位置、リソースの少ない地方ほど連携がうまく行かない現状と医療者、コミュニティ双方がコーディネート機能をもつことが課題であるとの報告しました。
いずれにしても、どちらも利用できる陽性者が自分の状態を把握して、積極的に治療と向きあうことが双方のスタッフのモチベーション維持には重要であることは一致しました。
りょうちゃんずは利用するかたがいつでも戻ってこれる場所の提供を今後も続けて行きたいと思います。
陽性者支援のセッションでは「HIV陽性者性行動変容支援プログラム」の途中経過を発表しました。木原雅子研究班の報告書で研究成果を発表できるものと確信しています。
もうひとつ、ピア・カウンセリングはりょうちゃんずの大きなテーマです活動の原典でもあります。そこで、第2はシンポジウム「包括的HIVカウンセリングに今求められるもの」の報告ですが、医師、薬剤師、看護師には医療の専門家としてその目的(ゴール)がはっきりしています一方、カウンセラーは「寄り添い」によって患者さんが自身明確化するときに役立ち、ますので患者さんと利害対立がありません。コミュニティの活動のゴール(目的)をふくめ、それぞれの役割りの違いがあらためて明確になったセッションでした。結果、利用者である患者がうまく使いわければよいと思います。しかし残念なことに、関連した演題の中で派遣カウンセリング制度をやめた地方自治体があることが報告されました。このことは、HIV陽性者の心理専門家へのアクセスを阻害することとなります。この解決は、カウンセリングに携る方の、医療現場でのカウンセリングのあり方の再考、医療職への理解への具体的な取り組み、患者への利用促進の方法の再構築が重要ではないかと考えます。心理士側の関係機関への働きかけに期待したいと思います。
 その他、りょうちゃんず企画で、「LivingTogether」を30日に広島市のクラブ(接客する女性がいるところ)で開催しました。内容は手記の朗読会でしたが、参加者はHIV陽性者、保健所医師、検査技師の大学院生、コミュニティ関係、研究者、日本赤十字社の私の友人、場所を提供してくれたママさんにも朗読に参加してもらいました。感動しました。自画自賛で申し訳ないですが良い企画でした。血液製剤由来陽性者の手記も加えれば幅がでますか。
 12月1日には広島でもイベントに参加し、検査上でのピア・カウンセリングに対応しました。検査を受けた方63名中判定保留者もなく、出番はありませんでしたが、現地、電話対応と相談者全員で準備しました。9日には石川県金沢市でも同様の即日検査イベントがあり、同じ役割りで参加します。

☆☆☆☆☆

相談員 はやっち

平成19年11月28日から30日に開催された第21回日本エイズ学会に参加しましたので、報告いたします。
広島開催:今回の学会が開催された広島国際会議場は広島平和記念公園内にありました。近くには原爆ドームや戦没者慰霊碑、平和の鐘、平和記念館等があり、広島の歴史を感じることができました。また、夜の平和大通りには「2007ひろしまドリミネーション」というイベントが行われており、イルミネーションで作られたお城や機関車、ツリー、不死鳥やドラゴンなどがライトアップし、華やかに輝いていたのは印象的でした。りょうちゃんずのお膝元である広島での開催ということもあり、改めて広島を体験しました。

大会テーマ:今回の学会のテーマは「Step up!情報と教育」と題しており、学会長によると一段上に昇ろうとする気持ちと、正確な情報を得ること、伝達していく大切さを表現しているそうです。医療者としてのレベルアップや、正確な情報を的確に早く伝えることの重要さや、後進を育てることは重要なことと感じます。私は、医療者ではありませんが、HIVを長く生活の一部としている者として、自信のレベルアップと共に、自身の経験を伝えることや、応援してくれる方々を新しく少しずつ増やしていければいいと思いました。

シンポジウム:「HIV陽性者の治療認識(Treatment Literacy)〜医療現場と自助活動の連携・協働の可能性を探る」と題したシンポジウムに参加しました。前年のシンポジウム「自ら動き出した陽性者たち〜自立と社会参加のための3つのプログラム〜」に続き、今回も全国から多くの当事者が参加して行われました。地方開催ということもあり、りょうちゃんずからもりょうさんが「地方におけるHIV陽性者の生活に関する医療とSHG(セルフヘルプグループ)との協働」と題して発言し、りょうちゃんずの設立経緯や現在の活動について、また行政や医療者、NGO活動の役割の違いを理解し合うことで、協働や連携ができる可能性があることについて話がされました。他に患者参加型の医療の実現(はばたき福祉事業団:大平氏)や、医師の立場からの医療情報提供(九州医療センター:山本氏)、ピアの立場での医療情報の理解や認識(ぷれいす東京:矢島氏)、治療と生活の両立した療養支援(ACC:池田氏)、生活者としての治療生活ガイドライン(ジャンプ+:長谷川氏)等が各シンポジストから発言されました。私が感じたことは、常に医療者と患者の治療方針や情報の受け取り方のギャップ、患者が治療を知識として理解することと生活することを踏まえた上で治療を実践することを認識することとのギャップ、医療者とSHGの活動に対するギャップがあり、このギャップを減らしていく努力が求められるのだろうかと思いました。例えば、医療者とのギャップについては、地方では医療機関が限られて、患者さんは病院や医師と折り合いが付かない場合に選択肢がなかったりします。今回のシンポジウムでは、様々な立場からの発言がありましたが、それぞれの得意分野や支援の仕方は違うわけですから、その役割をよく理解し、リソースとして時と場合に応じて活用することが大切ではないかと思いました。それが協働につながるのではないかと思います。

陽性者支援セッション(一般演題):代表が分担研究を受けている厚生科学研究班の取り組みとして、ケースマネージメントを使ったHIV陽性者のための性行動変容支援プログラムについて発表が行われました。内容は、HIV陽性者を支援するためのニーズをプログラムに生かすために行われた聞き取り調査に関する報告と、プログラムの概要です。時間が限られているため質疑はできませんでしたが、聞き取り調査はアンケート調査と違って、その方の貴重な経験や思い、また聞き取りを続けることによって心理的な変化が見られることなどメリットがありました。社会学者の協力を得たこのような手法は、HIV陽性者の課題の掘り起こしやHIV陽性者支援をする上で重要と思いました。またプログラムの実践、研修も今後の課題です。

学会に参加して:日本エイズ学会は、目の前にいる患者の治療をどうするかいう問題から、治療の進歩によって治療に限らず長期療養や生活全般に課題が変化してきたこともあって、教育者、研究者、支援者、そして当事者であるHIV陽性者自身も多く参加できる学会となってきました。そこは、他の学会と少し違うのかもしれません。私も日本エイズ学会に参加するようになってから数年が経過しました。最初は右も左もわからず見ず知らずの方ばかりで、まともに話しもできずに黙々と、治療情報を中心に集めようとしていたことを思い出します。しかし、りょうちゃんずの活動を通じて、知り合いが増え、情報交換や交流できたことで、HIVの治療は重要ではありますが治療だけでなく、様々なセッションにも参加し予防や検査、支援等も総合的にものを考えることができるようになりました。今学会でも、初めて参加したというHIV陽性者の方と話す機会もありましたが、こういった学会を通じて情報を得たり、参加することで新たな経験が得られる場合もありますので、今後も多くのHIV陽性者が参加できることを願います。新たなHIV陽性者の方と知り合えればいいと思いました。

☆☆☆☆☆

のりさん

この度、11月28日から30日にかけて、広島市の広島国際会議場で開催されました「第21回日本エイズ学会学術集会」に参加しましたのでご報告いたします。
まず最初に医療現場と自助活動の連携・協働の可能性を探る事をテーマとした「HIV陽性者の治療認識」と題されたシンポジウムに出席いたしましたのでご報告いたします。
 このシンポジウムはHIV陽性者の自助およびピアサポートの活動、HIV陽性者の治療認識における相互補完や連携の可能性を探る事を目的に先ずシンポジストより各々の立場からの活動報告等がなされました。シンポジストのはばたき福祉事業団の大平氏からは、薬害エイズ裁判の和解によって勝ち取った医療、福祉体制の説明や今後の課題といった報告があり、九州医療センターの山本氏からは服薬支援における患者の治療認識について自己管理をしてもらうために患者手帳を活用している事、しかし同じ言葉による説明でも患者によって受け取り方は様々で情報提供の難しさを痛感している事、ぷれいす東京の矢島氏からはピアグループミーティングの中に医療情報セッションを設け、基礎的医療情報の共有を行い自立支援をする目的の1つにしているとの発表がありました。
 又、りょうちゃんずの藤原氏からは、公的機関、専門家、NGOがそれぞれの役割が違うことを理解し、公的機関、専門家がNGOを信頼し活用できるようにし、NGOも他のNGOとネットワークを構築することが協働の第一歩になると発表しました。JANP+の長谷川氏からは生活者の視点から考える治療の重要性とただ知識だけ持っていても行動は変わらないとの問題提起がなされました。国立国際医療センター(ACC)コーディネーターナースの池田氏からは日々の診療現場における苦労や取り組みについて報告がありました。  ディスカッションでは、患者が多く集中している医療機関では医療者が疲弊している側面があることや,ACCの池田氏からは予約時間を守らない一部の患者や医療者に依存しすぎる患者の例をあげ、病院はコンビニではないので医療側に患者も歩み寄って欲しいといった発言がありました。又、ぷれいす東京の矢島氏からは、医療者と患者では意識にギャップがあり、医療者は問題解決指向型であるが患者はそのような環境で生活してはいないとの指摘がありました。それに対して九州医療センターの山本医師は、医者としてどうしても病気と向き合う癖があり患者も生活者ということを忘れないようにしたいとのことでした。
 様々な立場からのシンポジストが一同に会し1つのテーマについて議論したシンポジウムでしたが、各々が抱える現実的課題や問題点、本音が聞けたといった側面では連携、協働の可能性を探るといった目的はある程度達成されたように思いました。現実的に横たわる連携、協働する事についてはまだまだ解決しなければならないことが数多くあると思います。今回のシンポジウムはそれを解決していく第一歩なのだと思いました。医療者、NGO、患者ともに乗り越えなければならないハードルはまだまだ多いと思いますが、このようなシンポジウムや取り組みを今後も日本エイズ学会等で続けていくことの重要性を強く感じたシンポジウムでした。

次にエイズ学会2日目に行われた「日本におけるHIV感染予防戦略」パートナーマネージメントの意義に出席いたしましたのでご報告いたします。
 先ず名古屋市立大学の市川氏より男性同性間の性的接触による感染者が報告数の過半数を占め、エイズ患者においても1/3を占める現状の中で最近、東京、大阪ではゲイNGOがMSMの方たちが利用する商業施設などでエイズ予防啓発資材の配布するアウトリーチプログラムの成果が出てきている旨の報告がありました。しかしそういった商業施設やゲイ雑誌を利用しないインターネットが主な情報獲得やコミュニケーション手段の人達も増えてきており多様化しているため、これからはより当事者指向の啓発と啓発資材の開発と普及が必要であり、また行政がもっと予算と力を入れるべきであるとの事でした。
実際にエイズ関連の知識や検査、性行動に変化が現れているこのような取り組みは、もっと評価されるべきことであり、この取り組みが継続し他の地域でも普及するように行政的な支援は欠かせないと思いました。実際に同じアジアでもタイやカンボジアでは手法の違いはありますが国を挙げての取り組みが成果を挙げている旨の発表がシェア(国際保健協力市民の会)の沢田氏よりありました。世界エイズデーの頃だけの予防啓発ではなくもっと様々な場面での予防啓発が必要だと感じました。
 又、医師の立場から、大阪市立総合医療センターの後藤氏からは日々の診療の中で患者に対し、感染予防のメッセージを伝え、性行為や薬物使用について審判的な態度を取らないように心掛け患者とオープンな雰囲気で話をする事の重要性を話されました。
今までともすれば感染当事者に焦点が当てられる事が多い中で、アメリカ、カナダでのパートナーマネジメントの事例紹介などもあり、パートナーマネージメントによる感染拡大防止に繋げる様々なお話が聴けたのはとても有意義でした。
最後に学会最終日の夕方から場所を広島市内の繁華街にある飲食店に変えて行われたりょうちゃんず主催のワークショップ、HIV陽性者手記リーディングイベント「Living Together」ではHIV陽性者はもちろんのこと、様々な立場で活動されている方たちが参加されたHIV陽性者の手記の朗読会がありました。30名を超える参加者があり、HIV陽性者やそうでない人も一体となって手記の朗読に耳を傾け、HIV陽性者の気持ちのリアリティーを感じる時間になりました。

☆☆☆☆☆

しーちゃん

日時:2007年11月28日〜30日
場所:広島国際会議場
 先日、広島市内の広島国際会議場にて開催された第21回日本エイズ学会・総会に参加させていただいたので、ご報告致します。

○ HIV検査・相談
@ わが国において、医療機関に何らかの自覚症状で受診した際、すでにAIDSを発症している例が3割にも及んでいるとのこと。名古屋医療センターを受診した患者で分析したところ原因のうちいくつかは陽性告知後、医療機関への受診までの遅れにあるとの見解が出された。陽性告知後1ヶ月以内の受検者は95%だが、残り5%が1ヶ月から395日要しているとのこと。又、陽性判明時にCD4数が200未満の患者が35%を超えており、その背景としては「年齢が高い」「結婚暦がある」「自覚症状がある」等が挙げられ、検査場においては、「県外」「病院」「入院」にて判明した患者ほど免疫機能が低下していたとの報告でした。
A 感染告知後NGOを繋がるきっかけとして、ネット検索が相談機関、知人を介して、が多く、確認検査前になるとネット検索がほとんどという報告が特定非営利活動法人ぷれいす東京より行われた。抗体検査機関へのNGO活動の広報・周知、認容が今後の課題とのこと。
B 土曜日常設HIV検査事業を運営しているNPO法人チャームによると、12月のエイズデーと6月のHIV検査普及キャンペーンにおいて、異性間・女性の受検者数が多く、逆に、同性間・男性が減っていたとのこと。生涯初回受検者においては異性間・男女の受検の割合が多い傾向があるとのこと。検査普及キャンペーンにおいて、感染リスクが低い人の受検率が高く、検査が必要な人が受検しにくくなっているのではという危惧が伺われた。

○「包括的HIVカウンセリングにいま求められるもの」のシンポジウム 医師、看護師、薬剤師、SW,CPそれぞれの立場の人々によって、患者が集中する大都市での臨床現場での心理社会的援助(心のケア)(=包括的カウンセリング)の現状についての発表があった。
医師によっては、どのような患者にカウンセリングが必要なのか、又は医療サイドが慣れて?カウンセリングの必要性をあまり感じない例があるとのこと。通常の外来診療に加え、他の業務もあり、なかなか患者の心理面まで手がまわらないことが多く、医療者自身のストレスになっている状態で、HIV/AIDSに限らず、全ての診療部門においても、常勤カウンセラーが必要との提言でした。
看護の立場からも、人事異動や能力、専門性等の問題があり、看護師自身のエンパワメントが必要とのこと。
薬剤師からは、服薬に関して、患者の利益・生活を考えてアドヒアランスに繋げるか、という課題もあるとのこと。
心理社会的援助(心のケア)への今後の課題として、予算・人的不足、福祉制度の複雑化、患者に対しての広報不足、患者側の認識不足などを解決すべき項目が山積している。加えて、最近病院自体の閉鎖も相次いでおり、地域によっては、心理社会的援助(心のケア)までゆきついていないのも問題である。

○ シンポジウム「HIV陽性者の治療認識(Treatment literacy)ム医療現場と自助活動の連携・共働の可能性を探るム」
今回は医師、看護師を加えたシンポジストにより、それぞれの立場・視点からの発表があり、しかし、患者主体の治療のあり方という共通項目などがあり、たいへん興味深いものでした。 特に感染告知後は精神的にもかなりのダメージを受けており、医師の説明の良し悪しによっては、今後の治療方針に影響が出る恐れがあります。医療者と患者が医療的信頼関係をいかに構築し、患者自身にHIV/AIDSに対する知識・予防を教育し、自己管理を認識させることが重要である。又、患者自身も受身の治療ではなく、積極的に治療に対して参加するべきだと思います
。 HIV患者として、首都圏等の大都市なら、拠点病院等の施設や医師等を選ぶことが可能であるが地方においてはそうはいきません。ブロック拠点病院でありながら症例が少ない所や、定年退職による主治医の交代、又、新たな主治医が今まで通りの見立てをしてくれるのかという不安等、挙げればきりがありません。病院を替えるにも交通費等の経済的な問題もあります。主治医が替わったから診ることが出来ないということではなく、「ブロック拠点病院」にて受診出来るような体制になってほしいものです。
コーディネーターナースの立場からも、@親身な相談対応A知識・技術の教育B治療方針の協議C患者の権利擁護D適切なサービス等を患者に提供できるようにされているとの発表がありました。その事により、患者の治療の理解や定期受診、生活のリズム、合併・併存疾患の管理等の患者支援をされているそうです。又、受診1週間後に患者に服薬の確認をするためのセルフレポートを電話・メールにて確認されているとの報告もありました。まず、患者のアドヒアランスが決めてのようです。
HAARTによりHIV治療が大きく前進し、慢性疾患化(今は副作用の方が深刻ですが・・・)したことにより患者のQOLを向上・維持することが重要になっています。就職・結婚・挙児等、患者のニーズも日々変化している今日この頃。患者支援のサポートも日々変化が求められています。

○ソーシャルワーク
北陸ブロックにおいて身障手帳の申請を経験した市町村は10/51で、ほとんどが代理申請であった。又、申請経験を持つ市町村ほど、個室や仕切りのある場所での対応に気を配っているとのこと。しかし、申請後のプライバシーに関わる個人情報の保管状況に至っては、7割以上が特別考慮していないとのこと。全職員をふくめ、患者のプライバシー確保へ組織としての対応が課題となっている。
MSWの相談内容では、初回は医療費の相談がほとんどで、回を追うごとに、内容は多岐に渡るとのこと。HIV陽性者の支援課題として秘密保持、情報提供、そして安心できる相談関係等の診療環境が求められている。

○ 陽性者支援
HAART導入後、HIV/AIDSの症状が安定し、陽性者ニーズも社会、経済等、多岐にわたり、陽性者自身が社会生活へ復活するための支援に関心があり、聴講した。
就労に関する相談事例で、離・転職時に受検し、陽性が判明した事例が多く、上司に内々に報告した後、社内で公表するようにしむけられた件や、身体障害者手帳取得時の漏洩等の事例が報告されていた。陽性判明時の雇用保障といった社会参加に対しての相談が目立っているとの事。又、服薬に関しては、未経験者でもっとも不安な点は、「耐え難い副作用」がもっとも多く、経験者では「容姿に変化が生じること」であった。
ぷれいす東京が実施している新陽性者PEER Group Meeting(PGM)参加者に関しての調査からは、参加者は告知後1〜2ヶ月で20〜30代の割合が70%を超えるとのこと。その中でも「別の病気があったから」「気になるから」といった自主的ではなく他のきっかけで抗体検査を受検した割合が5割を超えているとのこと。又、PGMを知ったきっかけはインターネットがほとんどであるとの発表だった。今後は告知後の環境整備や陽性者同志の情報交換等、告知後のより良いスタートの実現のためにも、医療機関へ繋ぐだけではなく、多岐に渡った社会的な情報提供が必要とのことでした。又、別のセッションでは、陽性者本人に、予防行動がパートナーだけでなく自分自身の健康を守るというセルフエフィカシーを向上させる支援をケースマネジャーが個人介入することで、問題解決や性行動変容に結びつけることができるとの発表もありました。
今後求められることは、陽性者自身が主体性を持ち、治療に関しても、医者任せではなく積極的に参加し、支援する側は@ハームリダクションAノン・ジャッジメンタルという姿勢のもとに、陽性者が人生において希望と長期目標が持てる環境を整える必要がある。

感想として
開催地も地元広島ということで、県外からお越しの先生他参加者の方々に対して「ようこそ、広島へ」というのが挨拶代わりでした。
移動に関しても一つの建物内で同じ階でほとんどのセッションが行われ、たいへん楽でした。初めてブースも経験し、以前研修で一緒だった仲間や様々な立場の方々との出会い・再会も意義がありました。
今回はカウンセリングやソーシャルワーク等、陽性者支援関係のセッションを中心に聴講しました。メインテーマ「Step up!情報と教育」ですが、医療者だけに頼るだけでなく、我々患者自身がHIV/AIDに対して正しい情報収集と予防や治療・服薬の認識が必要な時期になったのではないかと思います。
ご協力頂いた方々に心から感謝致します。そして今後、学んだ事を皆様のお役に立てるようにがんばります。


FOLLOW 3周年 Friendship Meetingに参加して

しーちゃん

去る2007年9月16日、大阪市内にて開催された「FOLLOW 3周年 Friendship Meeting 」に参加しましたので、ご報告します。
西日本を中心に、MSMのHIV陽性者の方を対象とした支援事業をされており、その内容は、交流の場の提供や患者向けの情報発信、HIV陽性者の現状を社会へ発信するなどの幅広い活動をされている団体です。りょうちゃんずも、ホームページ関係でたいへんお世話になっております。「FOLLOW」という名前の由来は、HIV陽性者がお互いにフォローしあう、という意味と、HIV陽性者(Ourselves)とその周りの人達(friends)をつなぎ合わせ(Linking)共に生きていく(Living)ことを西日本中心(West)に行っていく(Organizing)という意味も持ちあわせているとの説明がありました。
今回のイベントはスタッフや陽性者の方々をはじめ、連携しているNPOや医療関係も多数参加された交流会形式で始まりました。
正直、当初はかなり緊張していましたが、食事やドリンクを取りながら、会話がだんだんはずんできて、又、知り合いの医療者の方とも話しがはずみ、有意義な時間を過ごしました。特に自分と同じ陽性者の方々の体験談や将来の夢などをお聞きすることができ、こちらの方が元気をもらうことができました。
今の世の中、我々HIV陽性者にとって、仕事、人間関係、体調、服薬、服薬による副作用に加えて、差別・偏見等と毎日が孤独と不安との闘いを強いられているように思います。心が荒んだ時、自分独りで悩みを抱えているとき、「話してみようか・・・」とアクセスできるところがひとつでもあれば・・・。そして、「話してよかった。」と言ってもらえる存在になれたらと思っています。
と、気がつけばもう中締めの時間。又、機会があれば、ぜひ参加して、勉強させていただきたいと思います。
 最後に、出会った全ての方々に感謝致します。


第8回アジア・太平洋地域エイズ国際会議参加報告

りょうちゃんず
相談員 はやっち

2007年8月20日〜23日まで、スリランカのコロンボで開催された第8回アジア・太平洋地域エイズ国際会議に参加したので報告します。 参加前に、スリランカでのICAAP開催が危ぶまれる話題や情勢不安等を耳にし、参加への不安もありましたが、町の印象として、通りの角には機銃を持つ兵士の姿が見える程度で、コロンボ市内は人と車に溢れた日常生活があって、トラブルもなく参加することができました。会場であるバンダーラナーヤカ記念国際会議場(BMICH)は、入口には仏教国ならではの大きな仏像があり、数多くの国際会議が行われた歴史ある建物だそうです。参加者は約60カ国から2400人以上であり、「変化の波、希望の波」をテーマに行われました。

開会式は、スリランカ大統領マヒンダ・ラジャパクセ氏が参加することにより、厳重なセキュリティのもと行われ、入場に際しては携帯電話、カメラ等も禁止という状況でした。何もやましいことはないのですが、厳重なセキュリティと警備体制に緊張感がありました。大統領は、アジア太平洋地域でのHIV陽性者の増加に触れ、多くの国々が手を取って対策を図らねばならないと強くアピールしました。元首がリーダーシップを発揮することで、ホスト国としての責任を果たそうという気持ちを表現していました。しかし、気になる点をひとつ。大統領はメッセージを終えると、プログラム途中にもかかわらず退席し、大会役員も一斉に席を外しました。過去に参加したバンコクの国際エイズ会議でも、VIPが途中退席したために、プログラム後半に残されたHIV陽性者のスピーチが、空席が目立つ会場で行われたことがありました。またしても、同じことが繰り返されるのかと心配しましたが、大統領を見送った後、大会役員等はHIV陽性者からのメッセージまでには戻ってきました。このことは少しほっとしたことと、立場上やむを得ないとはいえ、本当のリーダーシップを発揮しようと思うのであれば、陽性者からのメッセージこそ、大統領に一番に耳を傾けてもらいたいと思いました。

エイズ予防財団からHIV陽性者支援や予防啓発プログラムの情報収集課題を受け、シンポジウム、セッション等に参加しましたが、真新しいプログラムを目にすることができず、南アジアや東南アジア各国からの活動報告では、peer education を活用したプログラムやコンドームの配布、スポーツやイベントを主体とした啓発活動など、主に欧米や国際機関等の支援や予防プログラムが中心となっており、その報告は日本では既に行われているものばかりでした。そういう意味では、りょうちゃんずのピアカウンセリングによるHIV陽性者支援や、ジャンププラス、ぷれいす東京等で行われている陽性者支援プログラム等を日本流にアレンジしたプログラムとして、広く国外にアピールできる可能性を感じました。
また、HIV陽性者支援に関していえば、まず各国の陽性者とコミュニケーションを取ることが重要と考え、PWAラウンジ等を中心に回りました。PWAラウンジは、会場敷地内に設置され、陽性者限定の交流スペースであり、スリランカの当事者団体であるLanka+のメンバーとボランティアを中心に運営されていました。入場して早々にドリンクが差し出され、ランプータンを手で向いて手渡してくれました。食べなれないもので、モタついていたら笑顔で食べろと言ってくれました。甘く瑞々しいフルーツは感激でした。その他にランチ、マッサージスペース、仮眠スペースも用意されており、陽性者への体調への配慮等も含めて快適なスペースでありました。神戸での日本流のPWAラウンジとも違ったスリランカのラウンジも快適でした。
スリランカ、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、韓国等の陽性者とも語り合うことができました(できたつもり)。日本では当たり前に治療ができる状況にありますが、「発症したが、ようやく入手できた治療薬で驚くほど回復した」、「ネットワークを作るにもスティグマがあり組織化できない」、「地方の都市まで治療薬が行き届いていない」「国内の治療センターが限られているため、来るためには数日かかる」「同性愛よりドラッグユーザーの対策も重要」といった話しから、「私も神戸(7thICAAP)に参加していた」、「一緒に撮った写真を送ってくれ」、血液製剤を打つのは自己注射と伝えると、「大変だろうし痛いだろう」と心配され、「自分も検査の時の針が実は怖い」といった話しも聞き取れました。同じ陽性者として一歩近づいた気持ちになりました。また、日本で薬害エイズの和解によって整備された医療体制がすべての陽性者の治療に結びついていることや、今では感染ルートにかかわらず陽性者が一緒に活動をしていることについて、日本を少しばかりアピールしてきました。実際、ここで知り合った陽性者は治療がある程度できている様子でしたが、各国では、治療、宗教、文化、法律等の条件の違いから、日本とは比べられないほど厳しく辛い生活をしている方がたくさんいることも理解しておかねばならないと思います。私にとって国際会議の参加は、HIVを通じてたくさんの方々とつながっていること、アジアの現状をよりリアルに感じることができたことが収穫でした。今後、日本では日本なりの体制(治療、文化、法律等)の中で陽性者支援をしていくことになりますが、日本なりに状況(地域、治療、生活)がひとりひとり違うことを意識した上で、日本でのネットワークを活用し、同じ問題を抱えた者同士が触れ合い、語り合う機会を持てるよう、陽性者支援につなげていきたいです。

それと、神戸の会議では参加できなかったスキルズビルディングに参加しました。インドのカルカッタにあるNGOが主催する陽性者ネットワークやCBOのための人材開発と組織作りに関するスキルズビルディングでした。参加者同士が同じ一本の毛糸をつまみながら、これがネットワークの第一歩だと説明がありました。組織の大小にかかわらず個々の組織を尊重し、結びついていけばネットワークはすぐにでもできていくとのことです。組織作りにおいては、人が重要な資源として組織が動いていくことの大切さや、それぞれの役割分担を持つこと、スキルアップの必要性、組織運営維持の方法、それに大事なことは目的を達成するためにビジョンを持って行動し、メンバーで共有しながら進めていくことが大事であること等、組織作りに大切なポイントが講義されました。スキルズビルディングは、シンポジウムやセッションと違って、一緒に参加している感じが心地よかったです。日本での活動でも限られた人材と予算の中で活動し、継続していくことの難しさと感じることもありますが、これからも皆で協力しながら活動を続けていきたいと思います。

その他として、医療関係の発表が少なく感じました。展示ブースにおいては、製薬メーカーなどの展示がありませんでした。アジアでのエイズ対策と製薬企業との関係に起因するのかと思います。また、日本ブースでは、折鶴によるレッドリボンのオブジェは好評でした。折鶴を折る外国の方は思いのほか器用で、日本人である私の方が折り方を忘れていたほどでした。神戸でのYAKUGAIブースでの七夕飾りと短冊つくりを思い出しました。

閉会式においてAPN+から耐性問題や第2世代の治療薬の普及、スティグマを受ける女性の問題(暴力、差別、妊娠や子供)などが話され、陽性者コミュニティへの資金不足、陽性者が参加しないプログラムの成功はない、自分達が声を上げるスキルの獲得が必要という声明がありました。グローバルファンド等の支援による成果は挙がっているのは事実だろうと思いますが、支援される側と支援する側のギャップが存在することから、これからも陽性者は声を上げ続けなければならないと思います。日本においても、10年前に比べれば劇的にHIV環境は変わっています。しかし、声を上げなければ変わらない部分も多数存在するので、微力ながらアドボカシー活動をできる立場にあるものとして、国内のHIVの取り組みに対して、意見できることは伝えていきたいと思います。

最後に、日本ではMSMや薬害の問題としてHIVにスポットがあたりますが、アジアではドラッグユーザーや移民、弱い立場の女性や子供の問題として話題になることも少なくないと思います。日本では気付かないことなど、会議に参加した経験を日本の仲間たちに伝えていきたいと思います。今後も多くの陽性者が参加できる機会に恵まれることを期待するとともに、この派遣でお世話になったエイズ予防財団のスタッフや会議で出会いお世話になった皆様に感謝いたします。HIVにかかわる活動を通じて、またお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございました。