第22回日本エイズ学会学術集会報告
 
りょうさん
平成20年11月26日(木)〜28日(金)まで大阪市大阪国際交流センターで開催されました第22回日本エイズ学会学術集会に参加しましたのでご報告申し上げます。
今回で22回目の学術集会にも、私自身は第11回から参加し9回目(12回と18回は欠席)となりました。参加したころはプロテアーゼ阻害薬がでたころで、HIV陽性者にも未来があるような内容でした。その後の治療薬で、服薬回数、服薬錠数は減少し、HIV感染治療は進歩しました。その影響と社会変化に伴い、HIV陽性者やNGOの参加も増加し、純粋な学術集会ではなく、多様性のある集会へと変わっていきました。今回は、遺族(その意味を大きくHIVパートナー、家族を亡くした人と捉えて頂きたい)のシンポジウムがプログラムされる画期的な大会となりました。そのシンポジウムでぷれいす東京生島氏の発表では、MSMカップルが死別し、残った方の手記が朗読されました。聞いていてたくさんの仲間の葬儀に参加したときのことががダブってきました。感染経路が違っても手記の方や亡くなられた方に会ったことがなくても、自分がその葬儀にいたような錯覚におちいりました。僕は常々、違うものに触れたとき、共通のものを想像できなくなったら活動家として終わりにしようと思っていますが、錯覚がおきたことでまだ続けられると涙をながしながら冷静に思いました。次は、H薬害遺族の方の話でしたが、何度も聞いるのに毎回心にずしんと重いものがきます。「僕の家族」を「遺族」にできないので「死ねない」と今回も強く思いました。
自分の発表のシンポジウムでは「HIV関連の人は疲れている」「HIV陽性者になってしまうと幸せになれない」だから、「本物と一緒にまだやる。」「バトンは渡さない」がいいたかったのですが伝わりましたか。具体的な方法と成果は来年の学術集会で報告できるものと思います。楽しみにしておいてください。
治療をいつ始めるかのシンポジウムに参加しました。
新しいガイドラインでは治療は早めに(CD4数350以下)開始するよう改訂されました。これはSMART(戦略的中断)結果が影響しているとのことでした。B型肝炎合併患者では3TCが短財にならないようにすることが重要で3TCまたはFTC+TDFの2剤を含むHAARTが推奨やくとのことでした。結核合併症では結核治療薬や免疫再構築の関係で早期にHAARTを開始することが難しく症例ごとに配慮しているとのことでした。MAC(非定型抗酸菌症)合併症例も結核と同様症例ごとの配慮がひつようとのことでした。エイズ関連悪性リンパ腫患者ではエプジコムとレクシバ使用がACCでは多いとのことでした。いずれにしても、結核やMAC、サイトメガロウイルス感染症ではこれらの治療を行った後にHAART開始することが望ましいがエビデンスはないとのことでした。
ランチョンセミナーは琉球大学健山正雄先生による琉球大学および沖縄県での取り組みが紹介されました。受検者率全国一位や歯科・医師会向け公衆や研修の取り組み、MSM関係団体との連携が発表されました。また、大学病院での感染対策や実際HIV陽性者を招いた研修も発表されました。パンフレットの最後「なぜあの時、何もしなかったのか」をとわれるのではなく「あの局面で、賢明な行動がとれたのは、なぜか」と後世の批判に耐えうる歴史を関係者一同でつくりたいと思うと記載されていました。私もこのような活動をしてみたいと思っています。喫煙場にて健山先生と挨拶をした際、ひょっとしたら、薬害訴訟をしていない人がいるかもしれないとの情報をききましたので、大阪HIV薬害訴訟原告・弁護団に紹介してくれるようにお願いしました。時効の問題があるかもしれませんが同じ薬害被害者が、もしいるとしたら、ほっとけませんよね。
陽性者支援のセッションではぷれいす東京の電話相談、グループ・プログラム、長期療養者へのインタビュー、りょうちゃんずの性行動変容プログラムの報告がありました。HIVが長期療養疾患となり、「死ぬ」から「死なない(生きれる)」病気となったとき社会との繋がりを再構築しなければいけません。それには、治療、就労、性行動、挙子、告知等の情報をうまく獲得できるかが重要です。そこの部分をNGOは担っているとの印象でした。
最後に今年度もりょうちゃんず主催の食事会に参加してくれた方々、本当に有難うございました。おかげさまで今回も20人超の参加がありました。この食事会はいろんな人が勝手に自己紹介しながら繋がることを目的にしていますので、好きなときに来て好きなときに帰っていいことになっています。場所はだんだん狭くなります。ただし、参加者誰からも誘われない人は来てはいけないことになっています。来年も続けたいと思っていますので、是非参加下さい。
次回名古屋で開催しますが、皆様に会えるのを楽しみにしています。
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のりさん
この度、平成20年11月26日から28日にかけて、大阪市大阪国際交流センターで開催されました「第22回日本エイズ学会学術集会」に参加しましたのでご報告いたします。
まず最初に「日本のエイズ対策はどこへ向かうのか?」と題されたシンポジウムに出席いたしましたのでご報告いたします。
このシンポジウムはHIV感染症は世界的に対策面で脆弱な集団で流行しており、日本では男性同性間の性的接触による感染が未発症HIV感染者の2/3、AIDS患者の1/3を占め、男性同性愛者層への対策の遅れによる現実があった事を踏まえ、エイズ予防指針を改定して以来、検査キャンペーンの強化、エイズ施策評価検討会の設置などの変化があった事を踏まえ「エイズ対策のこれまでとこれから」という視点からシンポジストからの発表がありました。
先ず厚生労働省の秋野氏から日本全体の現状報告があり、先進国で日本だけが感染者が増えているという説は今はあてはまらず、先進諸外国でも感染者は増えているとの発表がありました。しかし、日本で感染者が増えている現状にかわりはないことも同時に報告がありました。特に20代、30代、男性同性愛の方や外国人に多い現状が語られ、抗体検査の少ない自治体ほど発症して感染がわかる人の比率が多い傾向があり、検査体制が整備された地域では献血で見つかる例が減少しているとのことでした。
また、19年度は前年度と比べ1.5倍の抗体検査数の増加があり、ポスターやTVコマーシャルでの検査啓発活動、世界エイズデーでのイベントやレッドリボンライブ開催による予防啓発活動などの取り組みの成果だとの発表がありました。
それから現状のエイズ医療提供体制再構築の報告があり、都道府県に責任をもってもらい中核拠点病院を整備していることの発表がありました。
次に東京逓信病院の木村氏から厚労省エイズ予防指針の見直し検討会、エイズ施策評価検討会委員長の立場から現状の発表があり、「1999指針」策定後も新規感染者が増えたことが「1999指針」見直しの背景だとのことでした。又、日本では感染者の20%程度しか抗体検査を受けておらず個別施策層、特に若者や同性愛の方などに当事者意識が薄いとのことでした。それは外国の病気と思っていたり、自分には関係がないといった思い込みによるものとおもわれるとのことでした。又、検査に関しても保健所の所在地がアクセスがよくなかったり検査時間が平日の昼間だったりすることが抗体検査の弊害になっているという以前から指摘されている問題がまだ解消していない現状の報告がありました。
次に大阪市保健所の下内氏から大阪でも感染者が年々増加しているとの事、統計的に見ると発症して見つかる割合が全国平均より低いとのことでした。しかし、二十歳前の感染者が増えてきたの教育機関(中学、高校)と連携して行かなければならない旨の発表がありました。また医療体制についてはSTIクリニックを充実させていくとのことでした。
シンポジウムの感想としては、各々の得意分野あるいは果すべき役割り、例えば厚生労働省はマスコミを使ってのコマーシャルやイベント開催などや全国展開のポスターにより実際の抗体検査数を増やしたり、医療体制再構築のため中核拠点病院の設立に着手するといった事や、大阪市保健所では具体的戦略の中にNGOとの連携があるといったことなど実績を作り出した例もあるように一時的ではなく継続することを願うばかりでありますが、まだ日本では感染者の20%しか検査をしていない現状をどのように変えていかねばならないかといった課題が残っていると感じたシンポジウムでした。
次に看護のセッションに出席しましたので報告します。先ず沖縄県立中部病院から「当院におけるHIV陽性者への禁煙支援」の発表があり、2008年7月現在のこの病院に通院中のHIV陽性者21名のうち喫煙者は約62%であり、沖縄県男性成人喫煙率33.5%と比較して高い。喫煙者には機会あるごとに禁煙を勧めてきたが、肺炎発症を機に自己努力で禁煙に成功した1名以外は短期間の禁煙に留まり禁煙成功に至らなかったが、院内に禁煙外来が開設された2006年6月以降に8名を禁煙外来に紹介し4名が受診した。そのうち2名が禁煙成功、1名失敗、1名通院中であるとのことでした。禁煙に成功した2名は「健康のため」失敗者は「看護師にすすめられた」と話していた。
又、禁煙外来を受診しなかった者には、費用の心配や禁煙に無関心という問題があったとのことでした。しかし禁煙外来に紹介した4名中2名が禁煙に成功した。ニコチン製剤の使用と禁煙指導が充実した禁煙外来との連携は有効であるとのことであった。私自身も今春まで喫煙者であり今も禁煙中ですが時に吸いたくなる事がいまだにあり、いかに依存性の高い物を吸っていたか思い知らされています。
次に「広島大学病院におけるHIV感染者に対する外来患者満足度調査」を聴講しました。調査内容は看護師の対応に対する満足度調査でアンケート用紙による調査で14項目について5段階評価によるものでした。17名から回答があり5点満点で平均4.69点と高い結果であったとのことでした。もっとも満足度が高かったのが「依頼したことに確実に対応する」「採血等の検査を安心して受けられる」「信頼感がある」の3点であり、次いで質問・相談への対応など、直接的な看護援助について満足度が高かった。一方で平均を下回ったのは「看護師同士の連絡・連携」「看護師と社会福祉士の連絡・連携」などスタッフ間の連携に関する項目であり、看護師の外来診療におけるコーディネーターの役割をさらに充実・改善していく必要性が示唆されたとのことでした。
最後に今学会の印象ですが、会場がコンパクトにまとまっており右往左往することなく比較的楽に過ごせました。来年もこんな感じならいいなと思いました。又、プログラムの組み方がよかったのか、聞きたいセッションの時間が重なってどちらかを諦めるといったことが今回無かったのがとてもよかったと思っています。これについても毎年こうだったらいいなと思いました。
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しーちゃん
去る11月26日(水)から28日(金)にかけて、JR新大阪駅から地下鉄で40分&徒歩10分程の所に位置する大阪国際交流センターにて開催された第22回日本エイズ学会学術集会・総会に参加しましたのでご報告いたします。
今学会は、我々人類にきわめて重要な問題に対して、「未来」を展望するために「エイズ・HIVと科学」というメインテーマが設定されています。私個人的には、相談事業に生かすべくHIV陽性者の方々の「未来」を探求するべく陽性者支援、増え続けるHIV陽性者への予防啓発等のセッションを中心に参加しました。以下は主に注目すべきところです。
1)シンポジウム2 HIV検査相談−その充実と今後の方向性を考える−
HIV検査相談に関わりのあるのシンポジストから今後のHIV検査相談の分析と方向性についての発表がありました。
保健所の方によると、土日・夜間の即日検査の導入により受検者数は年々増加し、2007年度においてはHIV陽性者の4割は保健所を含む公設検査で発見されており、役割は大きいとのことでした。受検者が年間500件以上集中する保健所がある一方、検査結果を返すのに2週間以上かかるところが3割、陽性者が0のところが7割、陽性者への手渡し資料がないところも3割にも上り、体制の見直しも必要との報告がありました。
また医療者・日本赤十字社の方々によると、HIV陽性者の中にはHBVに感染している方も多く、特に日本では稀なgenotypeAという欧米型が20〜30代男性に多く検出されており、今後STD検査も含め、受検者レベルの体制構築が必要とのことでした。
また、あるシンポジストによると、検査イベントのキャンペーン等により、受検者数は年々増加しているが、更に受検しやすい環境作りが必要との意見もありました。
私たち「りょうちゃんず」でも今年6月からHIV検査で判定保留で結果待ちの方の相談も始めましたが、このセッションに参加したことでその重要性を再確認出来、確信を持って相談活動を取組んで行こうと思います。
2)陽性者支援
特定非営利活動法人「ぷれいす東京」によると、HIV陽性告知直後半年以内と半年以上のHIV陽性者の方々の相談内容についての発表がありました。告知後半年以内の方では、HIV感染に対する漠然とした不安やHIVの情報提供を求める相談が多く、告知後半年以上の方では就労や投薬、他のHIV陽性者との交流等、より具体的な相談が寄せられていたとの報告でした。
又、告知後1年以上経過したHIV陽性者の方の多くは、パートナーに対して、当初は「死ぬ病」等の理由でHIV陽性者本人の心の中で「歯止め」をかける傾向にあったとのことです。しかし、その状態のままではお互い生活し辛く、HIV陽性者自身が社会関係や体調、通院、治療等様々な困難と直面しながらも、ピアな繋がり等、情緒的・情報的サポートを確保していると、何らかの形でHIV感染症観のシフトが起こり、それまでの「心の歯止め」が徐々になくなり、自分の好きな趣味や仕事を始める等、普通に生きていくための長期的な人生設計を考えるようになっている陽性者の方が増えているとの報告がありました。
我々も微力ながらも、みなさんのご期待に沿えるようなサポートが出来るようにがんばります。
3)陽性者就労
HIV陽性者にとって、差別・偏見によりHIV感染を開示して就職活動することはたいへん厳しい現実があります。
社会福祉法人はばたき福祉事業団の報告によると、ハローワークでは、HIV陽性者で身体障害者手帳を取得している方は内部疾患障害や精神障害等と同じく免疫機能障害者として「障害者枠」から紹介されることができますが、所によっては職員自体がほとんどHIV陽性者に携わった経験が少ないための認識不足や、逆に、陽性者自身も自分がHIVに感染を開示する方は少数であるし、ましてや言える環境ではないことも要因と考えられます。対策として、まず、ハローワーク内にHIV陽性者が個別に安心して相談できるブースを確保すること、ハローワーク専門職員に対してのHIV研修、そして、それを踏まえた上で、各企業への働きかけてもらうということが重要との報告でした。また、企業自体も、HIVに対する研修・教育を行うとともに、もし社員にHIV陽性が判明した場合、体調管理については労働安全衛生からのサポートを行うことが必要との報告もありました。今後いかにして企業に対してのHIV陽性者を受入れて方向に持っていくかが課題であるとのことでした。
4)シンポジウム9 介護を要する感染者を地域で支える
私も含め、近い将来、HIV陽性者がAIDSや高齢化等による身体的・精神的障害を伴い要介護状態になったらどしようかと心配されている方もおられるのではないでしょうか。そういった危機感もあり、このセッションに参加しました。
まず、看護師の方からは、長期入院患者への退院支援についての発表があり、状況に合わせて複数の退院先(自宅、他の医療機関、福祉施設)検討することが必要とのことでした。しかし、当事者がまだ若年者である場合や、その介護者が高齢者の場合、また医療機関や福祉施設での感染症の経験のない事等の理由による受け入れ拒否という課題も多く、MSWや保健師等の支援者を作り、介護に携わる支援者を支えることが重要とのことでした。
MSWの方からは、まず、HIV陽性者をいかに支えていくかを中心に考えているとのことです。MSWは各地域の社会資源と連携を図る機会が多く、HIV感染症に不慣れな施設に対して、医師、看護師と協働で研修会を開くことで、サービス提供が可能になるケースがあるということも報告されました。
また、HIV陽性者を受け入れた経験がある福祉施設の方からは、1:正しい知識を学び専門性の介護を提供すること、2:専門医療との連携、3:家族の心理の理解 の3つのポイントを学んだことが受け入れ可能となったとの発表でした。今後高齢者人口が増える近い未来、HIV陽性者を受け入れる体制作りが今後の課題とのことでした。
最後に、在宅療養を経験した訪問看護の方からは、陽性者自身が退院前に、自宅へ2、3日外泊することが必要との発表がありました。まず現実生活を経験し、陽性者自身がこれからの毎日どのように生活していくのかを模索し、また見守る家族も、これから始まる「終わらない介護」に対しての課題を乗り越える覚悟が必要とのことでした。そのために介護にあたる家族は、まず「善い人」はやめること、「できないことはしない」ことが疲弊しない介護のこつとの報告がありました。
5)シンポジウム12 HIV/AIDS患者のパートナー・家族・遺族への精神的ケアをめぐって
HIV陽性者の命が危機状態に陥った時、パートナー、家族の抱える喪失感、悲しみ、怒り、存在価値の喪失感等がより強くなる。にもかかわらず、付き添い、介護の使命を果たさなければならない。葛藤状態になり、自分の感情を語ることもはばかれる。そういった人達を支える為の相談窓口はあまりに少ないのが現状である。
国立病院機構大阪医療センターでは並行面接を実施しており、患者本人のカウンセリングとは別の心理士がパートナー・家族等の介護にあたっている人のカウンセリングを実施しているとのことです。また、今後は遺族の方の対応に関してもカウンセリングの必要性あり、現在検討・準備中との報告がありました。
6)サテライトシンポジウム8 関西地域におけるHIV陽性者の支援を考える
保健所等の公設施設へ自発的にHIV検査を受けて陽性告知を受けた人や一般医療機関の診療現場で陽性告知を受けた人達がきちんとHIV専門医療機関を受診する方がいる一方、なかなか受診にまで至らない方への支援について様々な立場からの発表がありました。
保健所、看護師の方々からは、他の医療機関からの紹介の場合は、前医に受診を促す支援が可能だが、保健所等の紹介は匿名検査であるため、支援が困難な状況となることが多いとのこと。
MSWの方からは、陽性告知を受けた人のための受診前相談窓口の設置が必要との発表がありました。癌診療連携拠点病院には患者のための「相談支援センター」の設置が必須となっていて、HIV陽性者の方のための「相談支援センタ」設置が未受診者の支援には必要となるのではとのことでした。
派遣カウンセラー、及びNPOの方々からも、陽性告知を受けた直後の人やそのパートナー・家族が気軽に相談できる「居場所作り」が必要とのことでした。
陽性告知を受けた人々の「こころのすきま」を埋める為に行政、医療機関、保健所、NGO/NPO等が連携できるシステム構築が急務とのことでした。
7)サテライトシンポジウム9 エイズNPOの社会的役割とは何か?
関西におけるHIV/AIDSのNPO/NGO活動の20年間を振返り、NPO/NGOの今後の展望と課題についての報告でありました。
医療体制、治療薬、福祉制度、情報等、HIV/AIDSを取り巻く環境は20年前と比べてはるかに整備されてきました。HIV感染症も慢性疾患化されつつあり、NPO/NGOに対するニーズも年々変化し続けています。またインターネットの普及によりNPO/NGOへの相談電話が著しく減少しているとの報告もあり、NPO/NGOへより細かで専門的な知識が求められているとのこと。
しかし、各NPO/NGOにも各々特色があり、個々で対応しようとするとどうしても限界を感じざる終えないのが現実である。また、報告では、各NPO/NGO団体の人材不足、資金不足といった運営上の課題や、スタッフ個人の経済的な問題によりNPO/NGO活動が縮小し、消滅した団体もあるとのこと。
今後の対処策としては@現状より更にHIV/AIDSに特化した独自事業(有料化)、A今できることを細々と続ける、BHIV/AIDSに特化しない方法を考える 等が発表されました。
また、今後、NPO/NGOの活動を維持していくためには、各団体の財源確保のための環境整備や政策、そして、何より信頼感に基づくNPO/NGO間での連携が必要で、お互いに協調していくことが何より重要であるとのことでした。
また、ある社会福祉法人の方からの報告では、先駆的な取り組みも必要とのことで、開拓者としてリスクは伴うが、果敢にチャレンジする姿勢が大切とのことでした。そのためには、世の中の社会・経済等の現状分析をしながら今後の動向を予測し、いかに先手を打つか、いかに事業開発や提言のチャンスを逃がさないよう心がけることが大切であるとのことでした。
最後に、今学会は私個人的には、前回までの学会に比べてよりNPO/NGO関連のセッションが多かったように思います。医療体制や治療薬の進歩により、HIV陽性者の生活も様変わりし、就職、結婚、挙児、高齢化問題等、相談内容も多様化し、陽性者自身の今後の人生をいかに支えていくかという支援に移行しているように思われました。当然、我々も相談員としての専門性もより高次なものを求められるようになります。今回様々なシンポジストの方々、NPO/NGOの方々と活動内容を話合うことで繋がることが出来、たいへん心強く思いました。同時に、医療、行政、NPO/NGOが互いに連携することにより、より陽性者の方の支援に、更には予防・啓発に繋がるために重要であることが再認識することができました。今後皆様のご期待に応えられる活動ができるよう、より努力してまいる所存です。この場を借りまして、今回、出会えた皆様に対して心より感謝致します。
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相談員 はやっち
去る平成20年11月26日から28日に行われた第22回日本エイズ学会(大阪国際交流センター・大会テーマ「エイズ・HIVの科学〜未来へ〜」)に参加したので、報告します。
私が学会に参加した目的は、研究協力をしている発表等はもちろんですが、検査体制の情報収集を目的に参加しました。過去には、治療の最新情報を得ることを中心に参加していたときもありましたが、治療の進歩により慢性疾患となった現在では、よりよい治療が全国各地でも受けられるようになりましたので、治療のことに拘らずに今後の活動を踏まえて検査体制の情報収集を行いました。
初日からシンポジウムとして、「HIV検査相談−その充実と今後の方向性を考える−」が行われました。岡山市保健所(中瀬氏)、委託で検査相談を行っている南新宿検査・相談室(小島氏)、NPO法人CHARM(松浦氏)、特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター(桜井氏)、有料検査相談のしらかばクリニック(井戸田氏)、検査相談研修のエイズ予防財団(矢永氏)、予防戦略研究(市川氏)、日本赤十字社(日野氏)ら各氏から報告がありました。
HIV関連活動の話題として検査相談の普及が叫ばれています。昨年は保健所等の無料検査相談が15万件に達したと聞きました。これは、今回の各パネリストが語られたように、迅速検査の導入や限られた人材と予算の中で、各施設と関係者の努力の成果と感じました。
しかし、現実には課題も多く残されており、各パネリストから様々な課題が発信されました。保健所ごとの取り組みが違うため利用者情報を利用した事業の見直しや働きかけに違いがある、地域ごとに取り組みに差がある、施設ごとに検査相談の増加によりサービスの低下につながっている、他業務との兼任のためスタッフの研修時間や活動に限界がある、イベント・広報等によるキャンペーンが施設側の期待する本当に検査を必要とする方々への検査機会の阻害になってしまうことがある等、様々な課題が明らかになりました。検査相談の普及はまだまだ各地で進んでいくかと思いますが、このような課題を共有できるよう様々な機会に情報発信されればと思いますし、自分も発信していきたいと思いました。
私は活動と通じて、改めて検査機会の重要性を感じています。それは、私たちの目指すところのHIV陽性者に誰にもなって欲しくないという目的のためには、きちんと検査を受けて欲しいものです。実際には受検することで、まずはHIV抗体検査がどういうものか体験してもらい、そのときは少なくともHIVのことを考える時間になると思うからです。だから私は、HIVが性感染症に位置づけられることでネガティブな検査に捉われがちですが、誰でもが気軽に受検できる体制作りに協力していきたいと思いました。
二日目は、りょうちゃんずが実施主体となっている「HIV陽性者のための性行動変容支援サービスに関する研究」について口頭発表がありました。これは、面談を行いながら、HIV陽性者としての今までのライフストーリーを語りながら、日常では語りにくいとされる性について語る機会を設けて、これから生活などを一緒に考えていこうというプログラムです。HIV陽性者支援のツールとして研究が進められており、支援団体等にも紹介しています。耳にすることがあったら、りょうちゃんずのホームページで確認の上、問い合わせして欲しいと思います。
同日「日本のエイズ対策はどこへ向かうのか」と題したシンポジウムが行われ、市川氏(名古屋市立大)、池上氏(ぷれいす東京)を座長に、秋野氏(厚生労働省)、木村氏(東京逓信病院)、下内氏(大阪市)、そして私たちの代表である藤原氏(りょうちゃんず)がパネリストとして参加しましたので、私も参加しました。
各氏より報告があり、今、日本のエイズ対策はエイズ予防指針の見直しにより、「普及啓発及び教育」「検査・相談体制の充実」「医療提供体制の再構築」という柱で動いている中で、普及啓発については公共広告機構や歌手や芸人等を巻き込んだ盛大なイベント等、一般参加しやすい取り組みを行っていること、検査相談体制の普及を進めて結果検査件数の飛躍的増加、中核拠点病院体制の整備など地方行政を加えた体制整備などが紹介されました。予防指針見直し委員会や施策評価委員会等にも当事者が加わるなど、ここ数年の進歩も一定の成果と思いました。
また、代表から施策提言として、現在の体制の中でNPOや患者団体が補完しあってようやく成立している体制や、公的機関の理解不足が他職種との連携の妨げになっていること、個人のモチベーションに頼らざるをえない体制により後継者不足や個人が疲弊していること、HIV陽性者への支援体制の未整備であること、そして責任と予算と権限を与えた機関の必要性を訴えました。「HIVになると幸せになれない」と発言されましたが、HIVに関わる誰しもが、大変な思いをすることを改めて感じました。さらに自分の生き様として「マラソンを100メートル走のように走り倒れる前にバトンをわたす」という言葉には、参加者が皆さん驚いていました。私も自分のことだけでなく、自分が次につながる存在か、次につなげられる存在になるか、考える機会になりました。
そして、実はこのシンポジウムの会場は満員でした。参加者は医療職、行政職、NGO、当事者団体等、様々な活動をしている方の顔が見えました。フロアーからは、弱年層やターゲットを絞った対策は取られているが、それ以外のコミュニティにアクセスしない方々への対応の必要性や、検査相談の普及だけでなく教育現場での取り組みを求める意見、まだまだNGO対策への予算の少なさなど、意見が出されました。日常では、個々の立場、活動していますに追われていますが、このようなシンポジウムを通じて、現状や今後の課題など、共有する時間が取れた貴重なシンポジウムとなりました。市川氏が最後にここに集まった人たちがいることが心強いと語られ、今回は大阪の取り組みが報告されたが、地域での話し合える場合が持てればいいということも語られ、私自身、改めて地域の活動を考えたいと思いました。
同日、私の役割として、「HIV抗体検査(迅速検査会)におけるHIV陽性者団体の役割についての考察」と題し、ポスターの前で1時間30分と限られた時間でしたが、ポスターセッション発表を行いました。今年6月の「とうかさん」のときに行われた検査イベントで、広島市、広島県、広島県検査技師会、広島県臨床検査技師会、広島大学病院、ユノ川クリニック等と私たちが一緒に取り組んだ結果を報告してきました。足をとめて聞いていただけた方もいました。全国各地で検査イベントが取り組まれていますが、広島では行政の枠を越えて広島市と広島県が一緒に取り組んでいること、りょうちゃんずが一緒になって参加することで、スタッフにも当事者団体の理解や啓発につながっていくことなど、アピールしてきました。それが垣根を越えたネットワークにつながることと思います。 検査のシンポジウムでも書きましたが、自身がこのようなイベントに参加した経験や、受検者の一部と関わった経験などは、更にはエイズ学会で発表した経験などは、今後の活動にさらに生かしていきたいと思います。
最後に、日本エイズ学会に、今回初めて参加した医療者の方にお聞きしたら、変わった雰囲気だねと言われました。確かに当事者を含めて様々な立場の方が参加しています。私も途中からの参加で、最初のころは、戸惑ったことを覚えています。それでも、既に22回の歴史を重ね、私自身も何度も参加するようになりました。その間、いつも顔をあわせている方や滅多にお会いできない方、お久しぶりにお会いする方まで、本当に様々な出会いや再会がありました。ひさしぶりに元気なお顔を見たりするとすごくうれしかったりします。年に一度の学会ですが、また来年も参加できたらうれしいです。学会中、何かとお世話になった皆様、いろいろありがとうございました。
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