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活動報告


= 2006年度 =
▼国連合同エイズ計画共同センター開所記念講演会参加報告て
▼薬害被害者〈患者・家族〉実態調査を終えて
▼第16回国際エイズ会議報告
▼2014年度 ▼2011年度                              
▼2010年度 ▼2009年度 ▼2008年度 ▼2007年度 ▽2006年度 ▼2005年度 ▼2004年度


国連合同エイズ計画共同センター開所記念講演会参加報告

りょうさん

 この度、京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻・社会疫学分野助教授である木原雅子先生をセンター長として、「社会疫学的HIV研究に関する国連合同エイズ計画共同センター」が設置されることになりました。このことは、日本のエイズ関係者、とりわけ予防に携る関係者にとっては非常に意義があることだと思います。振り返ると、4年前、木原正博教授の分担研究として「PCM導入に関する研究」を始めた際に、すでに彼はそれまでの経験から、予防の重要性をといておられ、プリベンションセンターの設立を目指しておられました。その記念すべき開所記念講演会に参加しましたので報告いたします。
 10月12日に京都市国際交流会館で行われた開所記念講演会には国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長、国連事務次長であるピーター・ピオット(PeterPiot)博士の「エイズ25年−人類の対応の軌跡と展望」と題した記念講演がありました。博士は感染症エボラ出血熱の発見に貢献された方で、先の肩書きに加え研究者としても著名な方ですので、皆様もご存知の方が多いのではないかと思います。
内容は、エイズが最初に発見されてから25年が経過し、その間には世界規模での陽性者の増加により、既に2500万人以上の生命が奪われ、HIVと共に生きる人々が4000万人以上に達していることや、国によっては感染者の増加による国力の低下など、国家規模での問題にもなっていることが話されました。世界地図のスライドで示された成人の陽性率の分布図では、サハラ以南のアフリカ南部の国では、成人の陽性者が15%〜34%も分布しており、特に立場の弱い女性や生活のために家族と離れて暮らす労働者の多くに陽性者が増えているとの報告でした。同じスライドで見る日本は、まだ0.1%以下の分布と低い数字でしたが、現実として、毎日三人づつ陽性者が確実に増えています。このことは、決して対岸の火事ではないことを、すべての人が認識し行動することが重要であることを示唆していたと思います。
 また一方で、ピオット博士は、これまでの取り組みによる成果として、いくつかの国では国家元首や政府レベルでのリーダーシップのもとに自国でのエイズ対策の成功や、途上国への財政支援により抗HIV薬が普及し途上国に住む150万人が治療を受けられるなど、地球規模での一定の成果も評価していました。これからは、この成果を更に進めるためには「実行」することが重要であり、その中には市民社会や当事者の参加も必要と話され、次に挙げる5つのポイントが特に重要と話されました。

1. リーダーシップ
 HIV対策を政治的トップレベルでの課題とすることや、選挙民の健康対策と位置づけて国会や地方議会で対応すること、エイズ問題を安全保障の危機・問題として位置づけることなどが必要。
2. 財政支援
 HIV対策を国家資金で動かしている国や、援助金で動いているところもあるが、単に豊かな国だけが払うものではなく、すべての人々に関わる問題として、グローバルな財政支援が必要(フランスでは航空券に課税してHIV対策に支援すること等)。
3. 資金の有効活用
 予防と治療環境の拡大、包括的プログラムの作成、組織とコミュニティとしての心的キャパシティ開発、リーダー育成・教育等への運用が必要。
4. 社会変革の構造的要因への取り組み
 HIV関連の差別と偏見、エイズに直接関連した社会的・経済的不平等への支援・対策が必要(同性愛者、IDU、女性、エイズ孤児、移動労働者等)。
5.研究と社会開発
 予防のための塗布、ワクチン開発、新世代の治療薬の開発が必要。

 以上のように、目標を達成するためには、多くの資金や人々の協力が必要不可欠であり、ひとりひとりがユニバーサルアクセス(普遍的アクセス:誰にもが手に出来る)という地球的運動への貢献を考えていかねばならないと語られました。そのためにも人権を侵されない予防・治療及びケアが必要と言われていますが、日本では十分とはいえません。委員となった予防法指針の施策、評価の検討会にて陽性者の当事者性を発揮し、新たな取りくみを展開していきたいと思います。
 今回設置された「社会疫学的HIV研究に関する国連合同エイズ計画共同センター」がどのような位置付けでどのような役割りを担うのかは、十分理解したとはいえませんが、りょうちゃんずで取り組んでいる予防、具体的には、「個人の行動変容を支援し、HIV感染の予防に役立てる」を一緒に活動してくれる仲間や、アドバイスを頂ける方々と続けて行きたいと思います。又、陽性者支援なき予防は発展するはずもなく、支援活動にもこれまで以上に、十分な対応が取れるよう日々努力精進したいと思います。本当は、夜の部が楽しかったのですが、それは秘密にして報告はしません。

☆☆☆☆☆

「りょうちゃんず」相談員 はやっち

 この度、京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻・社会疫学分野助教授である木原雅子先生をセンター長として、「社会疫学的HIV研究に関する国連合同エイズ計画共同センター」が設置されることになりました。10月12日に京都市国際交流会館に於いて行われた開所記念講演会に参加しましたので、報告いたします。
 当日は、「エイズ25年−人類の対応の軌跡と展望」と題し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長、国連事務次長であるピーター・ピオット(Peter Piot)博士から,記念講演がありました。講演では、エイズが最初に発見されてから25年が経過し、その間には世界規模での陽性者の増加により、既に2500万人以上の生命が奪われ、HIVと共に生きる人々が4000万人以上に達していることや、国によっては感染者の増加による国力の低下など、国家規模での問題にもなっていることが話されました。世界地図のスライドで示された成人の陽性率の分布図では、サハラ以南のアフリカ南部の国では、成人の陽性者が15%〜34%も分布しており、特に立場の弱い女性や生活のために家族と離れて暮らす労働者の多くに陽性者が増えているとの報告でした。同じスライドで見る日本は、まだ0.1%以下の分布と低い数字で示されていましたが、数字は低くとも誰もが陽性者となる可能性があり、決して対岸の火事ではないことを伝えるためにも、私は、現実として毎日、三人づつ陽性者が確実に増えていることをもっと具体的に、多くの方々に示す必要があると思いました。
 また一方で、ピオット博士は、これまでの取り組みによる成果として、いくつかの国では国家元首や政府レベルでのリーダーシップのもとに自国でのエイズ対策の成功や、途上国への財政支援により抗HIV薬が普及し途上国に住む150万人が治療を受けられるなど、地球規模での一定の成果も評価していました。これからは、この成果を更に進めるためには「実行」することが重要であり、その中には市民社会や当事者の参加も必要と話され、次に挙げる5つのポイントが特に重要と話されました。

1. リーダーシップ
 HIV対策を政治的トップレベルでの課題とすることや、選挙民の健康対策と位置づけて国会や地方議会で対応すること、エイズ問題を安全保障の危機・問題として位置づけることなどが必要。
2. 財政支援
 HIV対策を国家資金で動かしている国や、援助金で動いているところもあるが、単に豊かな国だけが払うものではなく、すべての人々に関わる問題として、グローバルな財政支援が必要(フランスでは航空券に課税してHIV対策に支援すること等)。
3. 資金の有効活用
 予防と治療環境の拡大、包括的プログラムの作成、組織とコミュニティとしての心的キャパシティ開発、リーダー育成・教育等への運用が必要。
4. 社会変革の構造的要因への取り組み
 HIV関連の差別と偏見、エイズに直接関連した社会的・経済的不平等への支援・対策が必要(同性愛者、IDU、女性、エイズ孤児、移動労働者等)。
5.研究と社会開発
 予防のための塗布、ワクチン開発、新世代の治療薬の開発が必要。

 以上のように、目標を達成するためには、多くの資金や人々の協力が必要不可欠であり、ひとりひとりがユニバーサルアクセス(普遍的アクセス:誰にもが手に出来る)という地球的運動への貢献を考えていかねばならないと語られました。そのためにも予防や治療及びケアが必要と言われていますが、世界の中の日本として位置や、日本国内における取り組みなど、課題は多く残されております。私は、ひとりの当事者の立場から、出来る限りの協力や努力をしていこうと思いました。
 さらに、今回設置された「社会疫学的HIV研究に関する国連合同エイズ計画共同センター」は、途上国(特にアジア)及び日本における感染に曝されやすい人々に対する社会文化的に適切で、かつ効果的なHIV予防を開発し普及することを目的にしていることからも、りょうちゃんずで取り組んでいる予防に関する取り組みも大切にしていきたいと思います。
 最後に、ピオット博士も人類の基本として相手を守り、現実を見て思いやることが大切と語られ、木原雅子先生も人の結びつきや支えあいが重要と語られました。私も多くの人に支えられて暮らしていることを実感しながら、また頑張っていこうと思いました。


薬害被害者〈患者・家族〉実態調査を終えて
ネットワーク医療と人権フォーラム
命を育む思想〜「薬害」エイズと医療〜参加報告

りょうさん

 りょうちゃんずが設立され、又、活動をしていくなかで、私自身が血液製剤によってHIVに感染したことはきってもきれないことである。そのため、薬害患者団体大阪HIV薬害訴訟原告団の理事として、医療交渉と被害者相談事業を行っている。現在は、それに加え、医療体制や予防の研究や、HIV当事者団体(ここではJaNP+)としての活動もあるが、りょうちゃんずの支援の土台は厚生労働省との協議で獲得しているといってもよい。上記表題をつけるにあたって、このことをまず申しておく。
 2006年10月に上記実態調査の質問紙調査報告書ができあがり、2年間実行委員として参加した調査が終了した。今回、10月14,15日に開催された、ネットワーク医療と人権主催のフォーラムにて報告の機会があたえられ、東京大学山崎喜比古助教授をはじめとした実研究者実行委員からその報告があった。そのなかで、「血液製剤によりHIV感染した陽性者を薬害被害者と位置付けることにより見えてくるものもある」との山崎氏の発言は薬害被害者と呼ばれたくないと思っていた私ではあったが、「そうか」と思うところもあり、表現からくるイメージと実際の事実は変えられないと気づいた。それならば、ことさら、かざらず、「薬害被害者を名乗れるときはそうしよう。」素直に思えた。
 さて、実態調査でのトピックスを報告しよう。
 第一は医療現場における告知の問題である。多くの医療者側にひとりで告知うけた。告知なしに、HIVに感染した人だけを呼んで、副作用被害救済制度の説明をはじめた。親に感染の事実をつげ、親から事実をつげられた。ガン告知では、家族と一緒に告知されるものだと聞いたことがある。それから比べると、ひどい告知のありかたであったと思う。しかしながら、今回回答した患者からは適切であったとの割り合いが高い。これは、ネットワーク医療と人権がおこなっている実態調査の医師の聞き取りで、「独特の関係性ができていた」との報告からも伺える。しかし、例えば広島でHIV治療、血友病治療を受けれる病院がいくつあるだろう。治療を受ける行為には目的があり、その前には、医師の個性は問題外である。つまり極論すると、治療機関、専門医が少なければ、医師は患者に対して優位にあり続ける。
 第二は薬害エイズを風化させないで欲しいとの訴えである。これは、薬害根絶活動の維持と差別・偏見をなくし、当事者が当事者としていきていくための社会つくりに貢献することであろう。薬害根絶は薬害関係団体が取組んでいるのでりょうちゃんずとしては、イベントに参加したり、依頼があればスピーカーを出したりしたいと考えている。差別・偏見をなくす取りくみは薬害団体とJaNP+と両方の枠組みのなかで考えることとしたい。そのこととは別は「患者支援」を目的としているりょうちゃんずも直接の支援だけでなく、クライアントの見えないものを、「感じ取る」「聞き取る」ことをより一層考えなければいけない。
 ネットワーク医療と人権は社会学者による薬害関係者(医師・患者)への聞き取りをもとにした実態調査を実施している。第3者による聞き取りであるため、当事者として首をかしげる結果発表もある。今回のフォーラムでも、好井裕明氏の「医師もある意味被害者」との発表や種田裕之氏、山田富秋氏の発表でも感じたことだが、前提や定義が曖昧な部分があるためだと思う。例えば、「被害者とはなにを持っていうのか」とのこの場合の定義がなされないので、薬害被害者の被害者と好井氏の被害者の違いがわからない。種田氏の「「薬害エイズ」から学びうること−医師・患者関係の水準で−」の発表での「共に考える機会を開いておく」との結論事態は正しいと思うが、当時、医師側からの不確実な状況であるとの情報は与えられていなかった事実を抜きには実態は見えてこない。蘭由紀子氏、日笠聡氏、山田富秋氏のナラティブ・ペイスト・メディスンとエビデンス・ペイスト・メディスンの関係のセッションについても、血友病にはエビデンスはあったが、HIV治療には治療薬すらない状況であることをどこで考慮しているかを伝えないと、セッションが何をいいたいのかがわからないと思う。全体的にはいいフォーラムであったが、薬害エイズの実態調査であることは前提であるので、その時代の記録(情報)としての事実(この表現はこの実態調査の委員長養老孟司氏がつかっていると記憶している)は大事に取り入れて欲しい。
 りょうちゃんずもその設立から10年経過した。最初は死に行く者への見守りのような形で始まったが、支援の方法も変わってきた。又、対クライアントに加え対市民社会的な活動も増えている。もう少し、分け入って尚・・・が、続くのだろうが、嬉々として分け入りたいものだ。


第16回国際エイズ会議報告

りょうちゃんず
代表 藤原良次

 2006年8月13日〜18日にカナダ・トロントで開催された第16回国際エイズ会議に出席致しましたのでその報告をさせていただきます。
 今回のテーマは「実行しよう」であり、今まで、取り組みだけが決まって何もアクションしていなかったことを踏まえたテーマである。しかしながら、HIV陽性者の増加が懸念される東欧の情報がない。参加者もあまりみていませんでした。本当はロシアをはじめ東欧諸国もHIV感染は広がっているはずなのに。また、ビル・ゲイツがグローバルファンドに多大な寄付をして話題をよびました。彼の思惑と想像するインドを助けるだけでなく、世界の予防と陽性者支援に使っていただきたいと思います。アフリカに加え、アジアは積極的に会議を活用していました。アジアに関しては昨年の神戸会議の主催者側に廻ったことで、意識しはじめたからかもしれません。5月に出会ったカナダの血友病患者の参加が思ったより少なかったようです。血液製剤感染の人のHIV問題は日本の方が進んでいます。
 次回アジア会議開催予定のスリランカの陽性者の方と昼食を共にする機会に恵まれました。スリランカでも陽性者は増加しているとのことでした。又、北側のレジスタンス活動が活発で、首都コロンボでもテロがおきておるとのことでした。カミング・アウトした陽性者は7人ですが、日本と大差ないと思いました。
 新規治療薬3剤の報告ですが、最も早く使えそうなPI(プロテアーゼ阻害)剤ベーリンガー・インゲルハイム製のTipranavirは500mgとリトナビル200mgを一日2回(8錠)服用で有効であり、副作用は肝機能障害、脂質(中性脂肪)上昇との報告がなされていました。こちらは掲載された「THE LANCET」を配布資料としていました。別のPI剤、tibotec製のTMC114(ダルナビル:米国申請2006.6.23)で、一日2回(6錠)600mgとリトナビル100mgを服用するとにより、多剤耐性ウイルスにも効果あり、CD4数、ウイルス量低下も既存のものより反応がよいようです。さらに、PI剤ロピナビル失敗者でも有効であるとのほうこくでした。又、副作用については下痢の頻度は少ないようですが、脂質(中性脂肪)代謝異常が認められたとの報告がありました、ロピナビルを最後の治療薬として温存している患者には朗報であると考えます。
 新しいNNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害)剤はフェーズ3とのことでした。
 その他の新薬情報では、アタッチメント阻害剤TNX355、pfizer製のCCR5は現在フェーズ3にはいっているとのことでした。また、インテグラーゼ阻害剤MK0515、フュージョン阻害剤TRI1144、TRI999も製薬メーカーブースにありましたが、まだ先のようです。いずれにしても。製薬メーカーの情報であるので、100%信頼するわけにはいきません。しかし、選択肢のないエイズ患者の希望であることはまちがいないと考えます。実際の治療現場では、患者が選択することが重要であると考えます。
 予防についてはアフリカやアジアの取り組みが報告されており、習慣、風俗、経済等の違いからか日本の問題とは異なっていますが、予防や教育は人権(HumanRight)を強く意識して取り組まないといけないことは共通の課題であります。さらに、日本においては戦略的な取り組みがなされていないことが陽性者の増加の原因であることは明白であり、政府の強いイニシアティブが望まれます。
 今回はNAPWAの「NGOの問題」とAPN+の「ピア・カウンセリング」のスキルズビルディングに参加しました。神戸にてPWAラウンジ主催でスキルズビルディング形式のPWAミーティングを開催したことがきっかけで興味がありました。内容は、私たちの組織ではすでになされていることであり、特に、ピア・カウンセリングにおいては、我々の方が優れている部分も多くありました、しかしながら、自分たちがつくりあげたマニュアルを各国のNGOに示す大きさには見習うところが大きかったです。
 権利擁護活動(アドボカシー活動)はセックス・ワーカー、ハームリダクション、同性愛者等マイノリティの方が困難な条件下でアドボケイターとして活躍されていました。日本では、血液製剤でHIV陽性者となった人とMSWグループがイニシアティブをとりアドボケイターとして活動しています。しかしながら、まだまだカミング・アウトできる環境にはありません。このことが、陽性者のGOL向上を妨げる大きな要因です。遠いゴールですが、続けていく覚悟を改めていたしました。
 個人のテーマであるPWAラウンジですが、ラウンジの広さ、食事等の飲食物の豊富さ、マッサージサービス、室内装飾も含め、居心地の良さは比べようもありません。しかし、身内褒めですが、スタッフは、昨年も負けてはいませんでした。
 最後に、「HIV陽性者による陽性者の支援」「HIV陽性者の世界的な連携」「GIPPAの更なる取り組み」「ユースの支援活動」「予防法指針とサーベランスに基づいた予防の国家的戦略にHIV陽性者として関わる」の5つを自己の課題として、大阪HIV薬害訴訟原告団、りょうちゃんず二つの枠の中で、スキルの構築、実践、研究の分野で活動していきたいと考えています。

☆☆☆☆☆

大阪HIV訴訟原告団
澤田 清信

 2006年8月12日?20日にカナダのトロントで開催された第16回国際エイズ会議に参加いたしましたので、報告いたします。
・抗HIV薬について
 この学会でトレンドな話題と言えばTibotec社から発売された新薬のプロテアーゼインヒビター(以下PI)TMC114(ダルナビル?)(米国2006.6.23承認)だと思われます。
 TMC114の特徴として、
1. 既存の薬で効かない多剤耐性ウイルスにも効果を示す
2. コントロールのPIに比べCD4数が5倍増加
3. コントロールのPIに比べウイルス量が検出限界以下になるのが4倍近い
4. コントロールのPIに比べ下痢の頻度が低い
5. 脂質変化(HDL,コレステロール、LDL)においてはあまり変化がないが、トリグリセリド(TG)においては、上昇傾向にあると言われています。用法用量としては、リトナビルでブーストして使用することが望ましく、TMC/rとして600mg/100mgを1日2回(1日6錠)食後に服用するという事になります。症例報告では、LPV/r(カレトラ)で治療失敗後、TMC/rを使用することでCD4数増加、ウイルス量が検出限界以下になった例も報告されていました。
 その他のPIではベーリンガーインゲルハイム社からtipranavir(aptivus?)(以下TPV)の報告もありました。TPVもリトナビルでブーストをかけて使用します。用法用量としては、TPV/rとして500mg/200mgを1日2回(1日8錠)食後に服用します。主な副作用として肝機能上昇(B,C型肝炎ウイルスに感染している人は注意)、中性脂肪(トリグリセリド)やコレステロールの上昇などがあります。
 最近では、新しい抗HIV薬の機序であるインテグラーゼ阻害剤(MK-0518)やフュージョン阻害剤(TRI-1144,TRI-999)が開発されているので注目して動向を見ていきたいと思われます。
 またエントリー阻害剤に分類されるアタッチメント阻害剤(TNX-355)、CCR5阻害剤(Maraviroc)は治験段階(第2相)、非核酸逆転写酵素阻害薬(NNRTI)であるTMC125(Tibotec社)が1日2回1回200mg服用で第3相試験中であるとのことでした。
ずっと薬を服用し続ければならない当事者にとってウイルスと戦うことが最重要ですが、同時に副作用とも戦っていかなければならないという現状があります。現在では、慢性疾患とまで言われるようになってはいますが、今後はAIDSで亡くなると言うよりも副作用が原因(例えば脂質代謝異常→動脈硬化→心筋梗塞→死)で亡くなる人が多くなっていくのではないかと思われ不安は感じます。今後、副作用対策にも力を入れた開発をしてもらえたらと思います。
 ・ HIV/AIDS患者のQOL及び予防について使える薬が増える、こういう薬が開発されていると知ることは、QOLをあげる1つの要因にもなると思われます。当事者からすると生きる希望が出てくると思われます。アフリカ、諸外国等でピアカウンセリングが積極的に行われて  いますが、ピアな人たちといろんな問題や状況を共有することによってQOLをあげていることはどこの国でも同じであると思われました。予防に関してはハームリダクションとコンドーム使用の考え方がありますが、どちらの考え方も正しいとは思いますが、当事者からの観点からすれば、感染が起こりうる状況におかれたとき「分かっているけど」と言う感情が出てくるのをどう抑えるかまで啓発していかなければならないのではないかと思われました。

おわりに
 2006年の会議テーマは「実現の時」と言うことで、自分自身が当事者としてこれからどのようにHIV/エイズと言う問題に向き合い、関わりそして取り組んで行けるかを考え、実現していくのかが今回の学会に参加させてもらえたことで見えてきた感じがします。またいろんな人達と出会い同じテーマでいろんな見方、考え方を共有できたことは、前向きに生きていく上で大きな財産となりました。今後、今まであまり自分自身が取り組むことができなかったアドボカシー活動、予防活動などにも目を向けてピアだからできることを積極的にしていきたいと思います。最後に、今回、一緒に派遣で参加させていただいた皆様、また今回貴重な機会を与えていただいた(財)エイズ予防財団に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。